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境界の塀をめぐってトラブルに! 隣家との交渉や解決策は?

2022年04月25日
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境界の塀をめぐってトラブルに! 隣家との交渉や解決策は?

住宅・土地統計の調査結果によると、2018年10月1日現在における山梨県の総住宅数は42万2000戸(5年前より0.02%減)、総世帯数は33万1900世帯(5年前より1.2%増)となりました。総住宅数が減少に転じたのは、1958年の初回調査以来初めてです。

住宅にまつわる、よくあるトラブルのひとつとして、隣家との塀、つまり境界線トラブルあります。こうしたトラブルや、塀の建設は、民法の規定を踏まえて適切に対応することが望ましいでしょう。

この記事では、隣地境界線と塀に関する民法のルールやトラブルの例、トラブルを放置した場合のリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「平成30年 住宅・土地統計調査結果 山梨県の概要」(山梨県))

1、隣地境界線と塀に関する民法のルール

民法では、隣地住民同士の関係性を規律する「相隣関係」のルールが定められています。
その中で、境界線付近の塀に関するルールもいくつか定められていますので、まずはその内容を確認しておきましょう。

  1. (1)自分の敷地内に塀を設置するのは自由

    大前提として、自分が所有する敷地の範囲内であれば、塀を設置することは基本的に自由です。

    土地の所有者は、当該土地を自由に利用することができ、塀の設置についても自由な利用方法のうちに含まれるからです。

    しかし、塀を設置してプライバシーを確保することの恩恵は、塀を設置した側だけでなく、隣家の側も享受することができます。それなのに、自分の敷地だけを使って塀を立てるのは納得できないと考えるのも、無理はないことでしょう。

    そこで、隣地との境界線上に塀を設置することができないか、という点が次なる検討のポイントになります。

  2. (2)境界線上に塀の設置することも可能|費用負担は折半

    結論から言うと、隣地との境界線上に塀を設置することも可能です。

    民法の相隣関係の規定では、所有者が異なる建物の間には、各所有者が囲障(塀)を設けることができ、設置費用は隣地所有者と折半する旨が定められています(民法第225条第1項、第226条)。囲障(塀)の設置は、プライバシー確保の観点から、隣地双方の所有者の権利と理解されています。

    そのため、隣地所有者が囲障(塀)の設置を拒否していても、裁判所に対して訴訟を提起し、囲障(塀)の設置をおよび費用負担を命じる判決を求めることが可能です

  3. (3)境界線上に設置する塀の材料と高さは?

    隣地境界線上に塀を設置する場合、塀の材料と高さについては、隣地所有者同士の協議により決定するのが原則です。

    しかし、協議が調わない場合には、板塀または竹垣その他これらに類する材料を用いて、2メートルの高さの塀を作らなければならないことが定められています(民法第225条第2項)。

    なお隣地所有者の一方は、板塀や竹垣等よりも良好な材料を用いて、または2メートルを超える高さの塀を作ることも可能です。

    ただしその場合、余分にかかった費用については、隣地所有者に請求することはできず、自分で負担しなければなりません(民法第227条)。

2、境界線上の塀に関してよくあるトラブル・対処法

境界線は、土地に関する権利が衝突する部分なので、境界線上の塀に関しても、しばしば隣家同士のトラブルが発生します。発生しがちなトラブルの例と、法律上の整理や対処法について見ていきましょう。

  1. (1)隣家の塀が越境している

    隣家所有者が独自の判断で立てた塀が、自分の土地に越境しているケースは非常によく見られます。

    前述のとおり、最終的には境界線上に塀を建てることも可能ですが、どちらか一方が拒否している場合には、裁判で裁判所から塀の設置を認めてもらうことになります。言い換えれば、裁判を経ていないにもかかわらず、隣家の承諾なく建てた塀は、境界線上にあってもその塀が民法の定めに合致していない場合には、取り壊さなければならなくなる可能性がありますし、費用も設置した人が全額負担しなければならない可能性があります。

    この場合、所有権に基づく妨害排除請求権を行使し、隣家所有者に対して塀の撤去等を求めていくことになります。

    ただし、塀の越境が軽微な場合については、塀自体を撤去することが経済的に不合理なことがあるので、その場合は、一定の金銭などと引き換えに、隣家との間で境界確認書を締結して和解することも考えられるでしょう

  2. (2)隣家が境界線上に勝手に塀を建ててしまった

    「民法で認められているのだから、境界線上に塀を建ててもいいだろう!」
    と言わんばかりに、隣家の承諾なく、勝手に堂々と境界線上に塀を建ててしまうケースもあると思います。

    これも越境のケースと問題状況は似ていますが、裁判で認められてもいないのに、隣家の承諾なく境界線上に塀を建てると隣地所有者から塀の撤去等を求められて、裁判で負けてしまう可能性があります。

    ただし、一度撤去しても、隣地所有者としては、いずれはあなたから共同の費用負担で塀の設置を求められる可能性が高いので、塀が土地の利用に具体的な支障を及ぼしていない場合には、境界線上の塀を追認してくれることもあるかもしれません。

  3. (3)隣家の塀のせいで日照が妨げられている

    隣家の敷地内に建っている塀により、自分が住んでいる家の日照が妨げられてしまうというケースもよく見られます。

    所有する敷地の範囲内で塀を建てるのは自由であるのが原則ですが、隣家の日照を妨げるような塀の立て方をした場合、権利濫用(民法第1条第3項)と評価される可能性があります。

    また、いわゆる「日照権」のような考え方に従い、人格権に基づいて塀の撤去を求めることも考えられるでしょう。

  4. (4)隣家から塀の費用負担を求められた

    現状隣家との間に塀は建っていない場合には、隣家から塀を建てることを提案され、その設置費用の負担を求められることも想定されます。

    前述のとおり、隣家との境界線上に塀を建てることは、最終的には裁判によって認められ得る権利です。

    そのため第一義的には、隣地所有者同士の協議によって塀の設置方法等を検討すべきですが、意見が折り合わない場合には、隣地所有者から訴訟を起こされることも覚悟しなければなりません。

    民法の相隣関係のルールに従った場合、訴訟ではどのように処理されるのかを踏まえた上で、適切な落としどころをイメージしながら、隣地所有者との交渉に臨みましょう

3、塀に関するトラブルを放置した場合のリスク

隣家との間の塀に関するトラブルを放置すると、生活上のデメリットが大きく、また訴訟リスクを抱えることにもなるので、早めに対処することが大切です。

  1. (1)隣家との関係性が悪化し、住みづらくなる

    境界について揉めている相手と隣同士に住む状態は、決して居心地のよいものではないでしょう。このようなモヤモヤした状態は、早期に解消することが望ましいでしょう。

  2. (2)訴訟に発展するケースもある

    境界線上の塀に関する争いを話し合いによって解決できない場合、最終的には訴訟による解決を図ることになります。

    当事者同士の言い分が食い違っている場合には、訴訟は長期化する可能性が高く、場合によっては半年から1年以上の期間を要することもあります。
    長期間にわたって訴訟を戦うのは、時間的・経済的・精神的に大きな負担です。

    そのため、できる限り穏便な解決を目指して、隣家との間で早期に話し合いの機会を持った方がよいでしょう。お互いが真摯(しんし)に協議をすれば、トラブルが深刻化しないうちに解決できる可能性が高まります。

4、隣家との境界線に関するトラブルは弁護士に相談を

隣家との境界線に関するトラブルは、民法の相隣関係の規定を踏まえたうえで、最終的な訴訟も見据えながら解決を図る必要があります。合理的な解決の道筋を探るためには、弁護士に相談することがおすすめです。

隣地の法務に精通した弁護士に相談すれば、隣家との交渉のポイントや、適切な妥協点などについてアドバイスを受けられます当事者が隣家と直接交渉する必要はなく、弁護士に交渉を代行してもらえますので、精神的な負担も大きく軽減されるでしょう

隣家との間で、境界線上の塀などに関するトラブルが発生した場合には、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

隣家との間に塀を建てたい場合、民法の相隣関係の規定などを踏まえて対応する必要があります。自分の敷地内に塀を建てる場合には、原則として隣家の承諾は不要ですが、隣家の日照などに配慮する必要があります。

一方、隣地境界線上に塀を建てたい場合には、隣家との協議が必要です。協議が妥結に至らない場合には、最終的に裁判で塀の設置方法などを争うことになり、紛争の長期化も予想されます。そのため、できる限り早期に弁護士に相談して、塀問題を穏便に解決することを目指しましょう。

ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスでは、相隣関係に関するトラブルの解決方法につき、随時ご相談を承っております。隣地との間で境界トラブルに発展し、その際塀をどこに設置するべきかなどが論点になっている方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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