在宅捜査で捜査機関から連絡がこない。逮捕の可能性や注意点について

2022年11月30日
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在宅捜査で捜査機関から連絡がこない。逮捕の可能性や注意点について

刑事事件を起こしても、かならず逮捕されるわけではありません。令和3年版の犯罪白書によると、令和2年中に全国の検察庁で処理された事件のうち、逮捕を伴う「身柄事件」の割合は34.8%でした。

これは、残りのおよそ65%は逮捕を伴わない「在宅捜査(在宅事件)」ということになります。在宅捜査は身柄事件と異なった流れで刑事手続が進みます。しかし、事件からある程度の時間がたったのに警察や検察官といった捜査機関から何の連絡もこないと「どうなったのだろう?」と不安に感じるでしょう。

本コラムでは、在宅捜査で捜査機関から連絡がこない場合に考えられることや逮捕の可能性について、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。

1、「在宅捜査」とは? 事件の流れや身柄事件との違い

刑事事件のニュースやドラマ・映画などでは「在宅捜査」という用語が登場しますが、どういった意味なのでしょうか。
罪を犯すと「逮捕される」というイメージがあるかもしれませんが、在宅捜査と身柄事件はどのような違いがあるのかも併せて確認していきましょう。

  1. (1)在宅捜査とは? 身柄事件との違い

    「在宅捜査」とは、警察・検察官といった捜査機関による犯罪捜査の手法のひとつです。
    犯罪の容疑者について、身柄拘束の手続を取らないままで捜査を進めることを在宅捜査といいます。

    捜査の必要がある都度、自宅から出頭し、いつでも自由に帰宅できる点から「在宅」という用語が使われていますが、同じことを意味する言葉として、犯罪捜査の基本である犯罪捜査規範という法律を根拠に「任意捜査」とも呼ばれます。

    一方で、容疑者の身柄を逮捕・勾留という手続によって捜査機関のもとで拘束した状態で進む捜査手法を「身柄事件」と呼びます。

    同じことを意味する言葉として、「任意」の反対として「強制事件」とも呼ばれます。
    自由な行動は大幅に制限されるので、自宅へ帰ることも、仕事や学校に行くことも許されません。

  2. (2)在宅捜査の一般的な流れ

    在宅捜査の一般的な流れは次のとおりです。

    • 警察による取調べ
    • 送致(いわゆる書類送検)
    • 検察官による取調べ
    • 起訴・不起訴の決定
    • 起訴されると刑事裁判が開かれる


    在宅捜査では、警察・検察官から「〇月〇日に取調べをする」といった連絡を受けて、指定された期日にみずから出頭することになります。

    事件の内容、取り調べられる本人や捜査機関側の都合などによって変わりますが、一度の取調べの時間はおおむね3~4時間、取調べを受ける回数も3回前後になるケースが多いでしょう。事件の処理が終わるまでには、警察の段階で1~2か月、検察官の段階でも1~2か月の時間がかかります。

    一方で、身柄事件の場合は警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内、さらに勾留を受けると10~20日以内の身柄拘束を受けて、勾留が満期を迎える日までには起訴・不起訴が決まります。

    身柄事件は法律が定めた厳格な時間制限のなかで捜査が進みますが、在宅捜査には時間制限がありません。

    「身柄拘束を受けない」という点は容疑をかけられている人にとって大きな利益ですが、時間制限がないため往々にして事件の処理に時間がかかりやすいという点は在宅捜査の不利な点だといえるでしょう。

2、在宅捜査で捜査機関から連絡がこない! 考えられる理由

在宅捜査の対象になると、必要の都度、捜査機関から連絡を受けて出頭することになりますが、数週間、場合によっては1か月以上の時間がたつのに連絡がこないケースがあります。
なぜ連絡がこないのでしょうか?
考えられる理由を探ってみましょう。

  1. (1)事件の重要度が低く処理が後回しになっている

    在宅捜査になる事件の多くは、被害額が小さな万引きやケンカを発端にした暴行・傷害といった、悪質性や被害の程度が軽い事件です。

    被害者・加害者にとって事件に重い、軽いなどありませんが、捜査機関は処理の優先度などを被害や罪の重さではかる傾向があるので、連絡がない場合は事件の重要度が低いと判断され、処理が後回しになっている可能性があります。

    在宅捜査には実質上の期限がないので、同じタイミングで重大事件の捜査が進んでいれば「数か月たってやっと呼び出しを受けた」という流れになるかもしれません。

  2. (2)捜査機関が処理方針に迷っている

    事件の内容によっては、捜査機関側が処理方針に迷っているため、なかなか連絡がこないというケースも考えられます。
    たとえば、被害者と加害者が一定の近しい関係にあって示談の経過によっては被害届等が取り下げられる可能性もあるといった状況なら、通常の流れで処理を進める必要がなくなるでしょう。

    この点も、在宅捜査には時間制限がないという特徴が関係しています。
    処理方針に迷っても、捜査機関は経過を見守る時間的な余裕があるので「取調べはもう少し時間をおいてから」という方針で連絡がこないのかもしれません。

3、在宅捜査から逮捕されることはあるのか? 起訴される可能性は?

現在、在宅捜査になっている方にとって不安なのが「今後、捜査機関の方針が変わって逮捕されることはあるのか?」という点でしょう。
在宅捜査が進んでいくうちに、検察官に起訴されて刑事裁判が開かれるおそれはあるのかという点も気になるはずです。

  1. (1)逃亡や証拠隠滅を疑われると逮捕される危険がある

    在宅捜査が進んでいる間でも、逃亡や証拠隠滅を疑われると捜査機関が方針を変えて逮捕に踏み切ってくる危険があります。

    「逮捕」とは、犯罪の容疑者について、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがある場合に限り、裁判官の許可を受けて身柄を拘束する強制処分です。

    もし、捜査機関からの呼び出しを受けているのに正当な理由なく拒否を続けたり、被害者に対して執拗(しつよう)に被害届の取り下げを求めて脅迫めいた行為があったりすれば、在宅捜査では対応できないと判断され、逮捕されるかもしれません。

    たとえ比較的に軽微な事件でも、身柄事件に切り替えられるおそれがあることを十分に心得ておくべきです

  2. (2)在宅捜査でも起訴される可能性は身柄事件と同じ

    在宅捜査と身柄事件の違いは「逮捕を伴うかどうか」です。
    検察官による起訴・不起訴の判断材料にはならないので、在宅捜査で処理されたとしても、起訴されて刑事裁判が開かれ、刑罰が科せられる可能性は否定できません。

    捜査機関からの連絡がないと「不起訴になったのだろう」と期待するかもしれませんが、在宅捜査には時間制限がないので、事件から数か月以上たっていきなり呼び出しを受けたうえで起訴されてしまう危険もあります

    在宅捜査だからという理由で安心できる要素はまったくないと考えておきましょう。

4、在宅捜査でも弁護士に相談するべき理由

刑事事件を起こして在宅捜査の対象になった場合は、弁護士に相談してサポートを求めましょう。とくに、捜査機関からの連絡もなく「これからどうなるのかわからない」といった場合は、弁護士のアドバイスが重要になります

  1. (1)事件の流れや今後の見通しを正確に知ることができるから

    刑事事件の解決実績が豊富な弁護士なら、在宅捜査の流れや警察・検察官の捜査手法にも詳しいので、今後の見通しを正確に知ることができるでしょう。

    「連絡もないし、不起訴になって解決できたのだろう」などと自分勝手な判断をしてはいけません。
    かといって、捜査機関に問い合わせても捜査の秘密を理由にはっきりとした答えを得られないかもしれないので、弁護士に状況を伝えて指示を仰ぎましょう。

    弁護士が捜査機関にはたらきかけることで、現在の方針などの情報を得られる可能性もあります。

  2. (2)被害者との示談成立による解決を期待できるから

    在宅捜査でも途中で逮捕されて身柄事件に切り替えられたり、検察官が起訴に踏み切って刑事裁判が開かれたりする危険があります。逮捕による身柄拘束や厳しい刑罰を避けるためには、被害者との示談成立による解決が最も有効です。

    ただし、加害者本人やその関係者が示談交渉をもちかけても、被害者の警戒心を強めてしまい、難航してしまうかもしれません。被害者との示談交渉は、公平中立な第三者である弁護士に任せたほうが安全です

  3. (3)在宅捜査への正しい対応についてアドバイスを得られるから

    在宅捜査になった場合も、身柄事件と同様に、警察官や検察官による取調べなどの捜査を受けます。不用意に不利な供述をしてしまったり、不当な処遇を受けたりするおそれもあるので、弁護士に相談してどのように対応すればよいのかのアドバイスを受けましょう。

    とくに、実際には罪を犯していないのに疑いをかけられている事件では、少しでも認めるような発言をしてしまうと不利を招きかねません。状況次第では黙秘権を行使するなどの対応も必要になるので、弁護士のアドバイスはきわめて重要です

5、まとめ

刑事事件を起こしても逮捕されず「在宅捜査」として処理されることになったのに、警察や検察官といった捜査機関からの連絡がないと「どうなったのだろう?」と心配になるでしょう。

連絡がないことで「不起訴になったのでは?」「責任を問わないという結論に至ったのでは?」と期待するかもしれませんが、単に事件処理が後回しになっていたり、捜査機関が処理方針に迷っていたりする可能性が高いです。「連絡がない」ことだけで解決を期待してはいけません。

在宅捜査になったのに捜査機関からの連絡がない、在宅捜査になったがこれからどうなるのか不安を感じるといった方は、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、現在の状況に沿った適切なアドバイスや解決に向けて必要なサポートで、不安を解消するお手伝いを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています