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執行猶予期間が経過すれば前科は消える? 前科と刑の消滅について

2022年12月22日
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執行猶予期間が経過すれば前科は消える? 前科と刑の消滅について

刑事事件の行方を報じるニュースなどでは「執行猶予」という用語がたびたび登場します。たとえば、令和4年6月には山梨県職員による恐喝・収賄事件について、甲府地裁が懲役2年・執行猶予3年の有罪判決を下したと報じられました。

執行猶予とはどういう処分なのか、同じように見聞きする機会が多い「実刑判決」とどのような違いがあるのか、ニュースなどを見ていても意味がわからないという方は少なくないでしょう。

本コラムでは「執行猶予」の期間が終わるとどうなるのか、前科は消えるのかといった疑問を、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。

1、「執行猶予」とは? 実刑判決との違い

まずは「執行猶予」とはどのような処分なのか、実刑判決との違いとあわせて確認しましょう。

  1. (1)執行猶予とは?

    執行猶予とは、刑事裁判の判決として言い渡された刑罰について、一定期間、その執行が猶予される制度です。

    たとえば、有罪判決が下されて「懲役1年6か月・執行猶予3年」が言い渡された場合、すぐに刑務所へと収監されるのではなく、3年間はその執行が猶予されます。

    ただし、ただちに刑罰が執行される事態を免れても「その期間は自由に過ごしても構わない」と考えるのは間違いです。

    執行猶予の期間中は社会生活を送りながら更生を目指すことになるので、新たな罪を犯してはいけないのはもちろん、規律正しい生活を心がけなければなりません

  2. (2)執行猶予がつく条件

    執行猶予には、その期間のすべてが猶予される「全部執行猶予」と、一定期間は刑務所へと収監されたのち、残りの期間を執行猶予とする「一部執行猶予」があります。
    それぞれの条件は次のとおりです。

    【全部執行猶予の条件(刑法第25条)】

    • 3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言渡しであること
    • 前に禁錮以上の刑を受けていないこと
    • 前に禁錮以上の刑を受けたことがあっても、その執行が終わった日又は免除された日から5年以内に禁錮以上の刑を受けていないこと
    • 前に禁錮以上の刑を受けたことがあっても、その刑の全部執行猶予を受けており、言い渡される刑が1年以下の懲役または禁錮であったこと


    【一部執行猶予の条件(刑法第27条の2第1項)】

    • 3年以下の懲役または禁錮の言渡しであること
    • 前に禁錮以上の刑を受けていないこと
    • 前に禁錮以上の刑を受けたことがあっても、その刑の全部執行猶予を受けた者
    • 前に禁錮以上の刑を受けたことがあっても、その執行が終わった日又は免除された日から5年以内に禁錮以上の刑を受けていないこと


    これらの条件に照らすと、最低でも3年を超える懲役や禁錮が定められている重大な罪を犯した場合は、言い渡される刑が3年を超えることが確実となりますので、執行猶予の対象外です。

    また、直近で禁錮以上の刑罰を言い渡されたことがある場合も、新たな事件では全部執行猶予が受けられない可能性が高いでしょう。

    なお、執行猶予がついたとしても、執行猶予の期間中にさらに罪を犯して全部執行猶予のつかない禁錮以上の刑に処された、過去の事件が発覚して全部執行猶予のつかない禁錮以上の刑の言渡しを受けたといった場合は、執行猶予が必ず取り消されます。

    執行猶予の期間中にさらに罪を犯して罰金に処された、保護観察つきの執行猶予を受けたのに順守事項を守らなかったといった場合も、裁判官の裁量で執行猶予が取り消されることがあるので、注意が必要です

  3. (3)執行猶予つき判決と実刑判決の違い

    執行猶予は、刑罰の執行が一定期間にわたって猶予される制度です。つまり、執行猶予がつかなかった場合、ただちに刑罰が執行されます。

    判決に執行猶予がつかないことを「実刑判決」と実務では表現していますが、実刑判決と呼ぶ対象となる刑罰は懲役・禁錮のみです。期限内に納付しなければならないという意味では罰金も実刑といえますが、通常、罰金に実刑判決といった表現は使いません。

    なお、わが国の制度では死刑に対する執行猶予の制度がないので、死刑にも実刑判決という表現は使わないのが通例です。また、懲役・禁錮・罰金よりも軽い拘留・科料も執行猶予の対象外ですが、実刑判決とは呼びません。

2、執行猶予の期間が過ぎるとどうなる? 前科は消える?

執行猶予の期間に新たな罪を犯さず無事に過ごした場合は、その後どうなるのでしょうか?

  1. (1)「刑の言渡し」の効力が消える

    執行猶予の取り消しを受けないまま期間を満了すると、刑法第27条の規定によって「刑の言渡し」の効力が失われ、執行が免除されます。

    たとえば、先に挙げた「懲役1年6か月・執行猶予3年」の場合、執行猶予の期間中に別の事件を起こすなどして執行猶予が取り消されることなく3年が経過すると、1年6か月の懲役は執行されません。

  2. (2)執行猶予の期間が過ぎても「前科」は消えない

    執行猶予の期間を無事に満了すれば、刑務所に収監される事態は回避できます。ここで気になるのが、執行猶予の期間を満了すれば「前科」はつかないのかという点です。

    前科とは、刑罰を科せられた経歴を指します。刑務所に収監された経歴を指すものではないので、たとえ判決に執行猶予が付されたとしても、あるいは懲役や禁錮ではなく罰金が言い渡されたとしても、前科がつくことに変わりはありません。

    また、執行猶予の期間が満了して消えるのは法律上の刑の言渡しの効力だけです。「刑罰を科せられた」という事実そのものは消えないので、前科は消えません。

3、前科がつくとどうなる? 生活への影響や回避する方法

一般的には、前科がつくと社会生活を続けるうえでさまざまな不利益が生じるというイメージがあるでしょう。しかし、実際にどんな事態が起きるのか、理解している方は少ないはずです。

前科がつくと、その後の生活にはどんな影響が生じるのでしょうか?

  1. (1)前科がつくことの影響

    前科がつくと、法律や制度のうえで次のような影響が生じます。

    • 公的な資格の制限を受けることがあり、就職や現在の職の継続が難しくなる
    • 履歴書の賞罰欄に記載しなければならないので、再就職が不利になる
    • 入国が制限される国があるので、旅行や出張が難しくなる


    いずれも本人にとって大きな不利益であることは間違いありませんが、問題なく職を続けられたり、海外へ渡航する予定がなかったりすれば、とくに不都合はないようにも思えるでしょう。

    そもそも、誰にどんな前科があるのかという情報は、検察庁が厳格に管理しており外部に漏れることは一切ありません。住民票や戸籍に前科が記載されるわけではないので、第三者が他人の前科の有無や内容を調べるのは不可能です

    ただし、新聞やニュース、インターネットの記事などで事件の情報が公開されてしまうと、多くの人に逮捕の事実や刑事裁判の結果を知られてしまいます。報道のことを記憶している人がいたり、インターネットで名前を検索されたりすれば、前科が知れ渡り、社会的な信用を失ってしまうかもしれません。

  2. (2)前科を回避するための方法

    刑事事件を起こして前科を回避するためには、有罪判決を受けて刑罰が言い渡される事態を防がなくてはなりません。

    刑罰を避ける方法として考えられるのは、次の3つです。

    • 警察に事件が発覚する前に被害届や刑事告訴を阻止して事件化を回避する
    • 履検察官の不起訴処分を得て刑事裁判に発展する事態を防ぐ
    • 刑事裁判で無罪判決を得る


    わが国では、刑事裁判を提起できるのは検察官だけです。そして、検察官が刑事裁判を提起する際は、有罪判決を得られるだけの証拠が存在するのかが事前に精査されるので、無罪判決を得られる可能性は極めて低いでしょう。

    現実的に、前科がついてしまう事態を回避するには、早い段階で事件化を回避するか、事件化が避けられなかった場合は検察官の不起訴処分を目指すことになります

4、刑事事件を起こしてしまったら弁護士に相談を

刑事事件を起こしてしまい、厳しい刑罰を受ける事態を回避したいなら、執行猶予つきの判決を目指すという考え方もあります。しかし、前科がついて不利益が生じてしまう事態を回避したいと望むなら、執行猶予を目指すだけでは足りません。

個人での解決は難しいので、すぐに弁護士に相談しましょう。

  1. (1)前科の回避に向けた弁護活動が期待できる

    弁護士に相談してサポートを依頼すれば、前科の回避に向けた弁護活動が期待できます。

    事件を起こしてごく早い段階であれば、素早い示談交渉によって警察への届け出を回避し、事件化そのものを防ぐことができるでしょう。

    また、すでに警察に発覚して捜査が進んでいる場合でも、被害者との示談成立や本人が深く反省しているといった事情を検察官に伝えれば、不起訴処分が下される可能性も高まります。

    被害者との示談交渉や検察官へのはたらきかけには、法的な知識と実務経験が豊富な弁護士の力が欠かせません。相談・依頼が早ければ早いほど前科を回避できる可能性を高められるので、ためらうことなく弁護士への依頼を急ぎましょう

  2. (2)執行猶予を目指した弁護活動が期待できる

    罪を犯したのが事実であり、事件化を避けられない状況であれば、前科がつく事態を避けるのは難しいかもしれません。しかし、懲役・禁錮に執行猶予が付されれば、刑務所に収監されて社会から隔離されてしまう事態は回避できます。

    執行猶予が付されるには、法律上の条件を満たす必要があるほか、裁判官に良い心証を与えたうえで執行猶予を付するのが適当だという判断を得なければなりません。また、執行猶予の対象外となる重罪でも、情状酌量による「減軽」を受けることで執行猶予が得られる可能性があるので、やはり被害者との示談成立や深い反省を示す行動は大切です。

    加害者にとって有利な事情を集めて主張するには、弁護士の助けが欠かせません。事件化を回避できない、有罪判決は避けられないといった状況でも、弁護士に相談してサポートを求めましょう。

5、まとめ

刑事事件の判決に「執行猶予」が付されると、懲役や禁錮といった刑罰の執行が一定期間にわたって猶予されます。期間が満了すれば刑の言渡しの効力が失われるので執行が免除されますが、一方で「前科」が消えることはありません。

前科は「刑罰を受けた経歴」であり、一度ついた経歴を消すことは不可能なので、さまざまな不利益を回避するためには前科をつけないための対策に力を注ぐべきでしょう。

刑事事件を起こしてしまったものの、前科がついてしまう事態は避けたいと望むなら、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスへの相談をお急ぎください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、前科の回避に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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