過失割合に異議あり! 弁護士特約で保険会社の対応はしてもらえる?

2023年04月24日
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過失割合に異議あり! 弁護士特約で保険会社の対応はしてもらえる?

令和3年(2021年)に山梨県内で発生した交通事故は2093件でした。

交通事故の過失割合は、慰謝料その他の損害賠償の金額に大きく影響するため、加害者と被害者の間で揉めることの多いポイントです。適切な過失割合に基づき、十分な損害賠償を得るためには、弁護士への協力が重要といえます。

交通事故対応を弁護士に依頼する際には、「弁護士特約」を利用すると費用負担を軽減できます。事故に遭った際は、ご自身やご家族の加入している保険に、弁護士特約が附帯されていないかを確認しましょう。

今回は、交通事故の過失割合の概要やトラブル事例、弁護士特約の活用などについて、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。

出典:「交通事故発生状況(令和3年中)」(山梨県警察)

1、過失割合はどのように決まるのか?

交通事故の過失割合は、事故の客観的な状況に応じて、示談交渉・交通事故ADR・訴訟などの手続きを通じて決定されます。加害者側の保険会社から過失割合を提示されても、そのまま受け入れる必要はありません

  1. (1)過失割合は事故の状況によって決まる

    交通事故の過失割合は、事故の客観的な状況に応じて決まります。事故の類型ごとに定められた基本過失割合に、修正要素を加味して最終的な過失割合を求めるのが一般的です。

    <基本過失割合の例>
    • 青信号で進入した自動車と赤信号で侵入した自動車の交差点事故
      →青信号車0%、赤信号車100%
    • 信号機がなく、片方に一時停止規制がある交差点における自動車同士の事故
      →一時停止規制がない側20%、規制がある側80%
    • 信号機のない同幅員の交差点における自動車同士の事故
      →左方車40%、右方車60%


    <修正要素の例>
    • 赤信号車の明らかな先入
    • 著しい過失
    • 重過失
    • 見通しがきく交差点であること
    • 夜間であること
    など


    交通事故の客観的な状況を示す証拠資料としては、ドライブレコーダーの映像や警察官作成の実況見分調書などが挙げられます。目撃者の証言も、事故の客観的な状況に関する有力な証拠となる場合があります。

  2. (2)過失割合を決定する手続き|示談交渉・交通事故ADR・訴訟など

    過失割合を決定する主な手続きとしては、示談交渉・交通事故ADR・訴訟などがあります。

    ① 示談交渉
    被害者が加害者(または任意保険会社)と話し合い、過失割合を考慮した上で損害賠償(保険金)の支払額を合意します。

    ② 交通事故ADR
    裁判所以外の第三者機関の仲介・あっ旋を通じて、過失割合を考慮した上で損害賠償(保険金)の支払額を合意します。
    参考:公益財団法人交通事故紛争処理センター
    参考:公益財団法人日弁連交通事故相談センター

    ③ 訴訟
    裁判所の判決によって、過失割合を踏まえた損害賠償額が強制的に決定されます。過失割合については、被害者側・加害者側が互いに主張・立証を行った末に、裁判所が決定します。
    なお、訴訟の途中で和解が成立することもあり、その場合は和解(合意)の内容に従って損害賠償の精算を行います。


    示談交渉・交通事故ADRでは被害者側・加害者側の合意、訴訟では裁判所の判決(和解の場合は合意)によって過失割合が決まります。

    加害者側(任意保険会社)から提示された過失割合は、加害者側に有利なものとなっている可能性が高いです。被害者としては、それを鵜呑みにすべきではなく、弁護士のサポートを受けながら適正な過失割合を主張しましょう。

2、過失割合に争いが起こりやすい主な事例

過失割合は損害賠償の金額に大きく影響するため、被害者側・加害者側の間で争いになるケースが非常に多いです。

過失割合が争われやすいケースとして、以下の3つを紹介します。

  1. ① 車線変更時の交通事故
  2. ② 損害が多額に及ぶ交通事故
  3. ③ 客観的な証拠が乏しい交通事故


  1. (1)車線変更時の交通事故

    車線変更時の交通事故における基本過失割合は「前方車(進路変更車)70%、後方車(後続直進車)30%」です。車両はみだりに進路を変更してはならないものとされているため(道路交通法第26条の2第1項)、車線変更をした前方車の過失割合が基本的には大きくなります。

    ただし、車線変更をした場所やタイミング、運転者の挙動などによっては、基本過失割合が以下のように修正される可能性があります。

    (例)
    • ウィンカーを出さずに車線変更をした場合
      →前方車90%、後方車10%
    • 車線変更禁止区間で車線変更をした場合
      →前方車90%、後方車10%
    • いずれかの車両に速度超過があった場合
      →15km/h以上30km/h未満の速度超過は10%、30km/h以上の速度超過は20%の加算・減算
    など


    このように、修正要素は過失割合に大きな影響を及ぼすため、どのような事実を考慮すべきかにつき、被害者側・加害者側の間で争いになるケースがよくあります

  2. (2)損害が多額に及ぶ交通事故

    交通事故の過失割合は、過失相殺(民法第722条第2項)によって賠償金額を大きく左右します。

    たとえば、交通事故によって被害者が重篤な後遺症を負い、損害総額が1億円に及んだとします。

    この場合、加害者側に100%の過失が認められれば、加害者は1億円全額を賠償しなければなりません。これに対して、加害者側の過失割合が80%である場合、加害者は8000万円の損害賠償義務を負うにとどまります。

    上記のように損害が多額に及ぶケースでは、過失割合が10%~20%程度変化するだけで、損害賠償額が数千万円単位で変わります。このような場合、被害者側と加害者側の間で、過失割合が激しく争われるケースが多いです。

  3. (3)客観的な証拠が乏しい交通事故

    交通事故の過失割合は、事故の客観的な状況に基づいて決まります。

    しかし、事故当時の状況はあくまでも、残っている証拠から事後的に検証しなければなりません。交通事故の客観的な証拠が乏しければ、過失割合の立証は難しくなります。

    たとえばドライブレコーダーの映像があれば、事故当時の状況を克明に知ることができる可能性が高いです。実況見分調書も、中立な立場にある警察官が作成するため、事故状況に関する信頼性の高い証拠として働きます。

    これに対して、ドライブレコーダーの映像がなく、人身事故としての報告が遅れたために実況見分調書も作成されなかったケースでは、交通事故の客観的な証拠がほとんど残っていないことが多いです。

    この場合、被害者は目撃者の証言や独自のシミュレーションなど、信頼性の評価が難しい証拠を用いて過失割合を主張せざるを得ません。加害者も厳しく反論し、過失割合に関する争いは激化することが予想されます。

3、過失割合を争う際に役立つ「弁護士特約」

交通事故の過失割合を加害者側と争う場合は、弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼する際には費用がかかりますが、「弁護士特約」を利用すれば、弁護士費用の負担が大幅に軽減されます

  1. (1)弁護士特約とは

    「弁護士特約」とは、弁護士費用を保険金から支払ってもらえる、各種保険に附帯された特約です。自動車保険や火災保険などに附帯されています。

    多くの場合、300万円程度を上限に弁護士費用が補償されます。依頼先の弁護士は、被害者が自分で選べます。

  2. (2)弁護士特約を使えるケース・使えないケース

    弁護士特約は、加入している保険に附帯されている場合に限って利用できます。ご自身が加入しているものに加えて、ご家族が加入している保険に附帯された弁護士特約も利用できる場合があります。

    <弁護士特約を利用できる人>
    • 被保険者本人
    • 被保険者の配偶者
    • 被保険者の同居の親族
    • 被保険者の未婚の子


    弁護士特約を保険に附帯させている家族がいるとしても、その家族と上記いずれかの続柄にない場合には、弁護士特約を利用できないのでご注意ください。

  3. (3)弁護士特約を使うメリット・デメリット

    弁護士特約を利用すると、弁護士に依頼する際の費用負担が大幅に軽減されるメリットがあります。

    交通事故の損害賠償請求については、弁護士特約を使って依頼すると、弁護士費用がゼロとなるケースも珍しくありません。弁護士に依頼する際には、利用できる弁護士特約があるかどうかを必ずご確認ください。

    弁護士特約を利用することのデメリットは、保険料が若干増額となる点を除いて特にありません。弁護士特約を利用できる場合には、必ず利用することをおすすめします。

4、交通事故の対応を弁護士に依頼するメリット

交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼することには、主に以下のメリットがあります。

  1. ① 損害賠償請求の手続きを弁護士に一任できるため、時間・労力・ストレスの負担が軽減されます。
  2. ② 適正な損害額や手続きの見通しなどについてアドバイスを受けることができ、損害賠償請求に関する不安が払しょくされます。
  3. ③ 裁判例に基づく「裁判所基準(弁護士基準)」により、客観的な損害全額の賠償を請求できます。
など


ご自身やご家族が交通事故の被害に遭った方は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

交通事故の過失割合は、損害賠償額に大きな影響を及ぼします。

適正な過失割合に基づく損害賠償を受けるためには、損害賠償請求を弁護士にご依頼ください。自動車保険や火災保険の弁護士特約を利用すれば、弁護士費用の負担が大幅に軽減されます

ベリーベスト法律事務所は、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。ご自身やご家族が交通事故の被害者となってしまったら、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています