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代休の場合は休日割増賃金が発生する? 代休と割増賃金の関係

2022年09月08日
  • 労働問題
  • 代休
  • 割増賃金
代休の場合は休日割増賃金が発生する? 代休と割増賃金の関係

休日出勤をさせた労働者に対して、その代償として代休を与えることがあります。代休を与えることによって労働者の働きすぎを抑制する効果が期待できるため、代休制度を設けて、運用している企業も多いでしょう。

しかし、なかには代休制度と休日出勤の割増賃金の関係について正しく理解しておらず、誤った運用をしている企業もあるのではないでしょうか。休日出勤の割増賃金の支払いが必要であるにもかかわらず、それを怠っていると労働基準法違反によるペナルティーを受けるリスクもあるので注意が必要です。

今回は、代休と割増賃金の関係について、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。

1、正しく理解しておきたい「代休」の仕組み

代休とは、労働者に休日労働を行わせた場合に、その代償としてそれ以後の労働日を休みにすることをいいます。

休日出勤をした労働者に対して、代休を与えるかどうかは、労働基準法などの法律によって義務付けられているものではありませんので、代休を与えなかったとしても直ちに違法になるというわけではありません。

したがって、休日出勤が重なり、週に1回または4週に4回という法定休日を下回る状態になっていない限りは、代休を与えなかったとしても問題はありません。

ただし、休日出勤をした労働者は、心身ともに疲弊していることが予想されますので、代休を与えてリフレッシュさせることは、仕事に対するモチベーションを向上させるためにも必要なものといえます。

2、代休を取得した場合に割増賃金は発生する?

代休を取得した場合にも割増賃金の支払いは必要となるのでしょうか。

  1. (1)休日出勤に対して支払われる割増賃金とは

    休日出勤の割増賃金とは、労働基準法が定める法定休日に労働者を働かせた場合に支払われる割増賃金のことをいいます。

    労働基準法35条では、週に1回または4週に4回以上の休日を労働者に与えるように定めており、労働基準法35条が定めた休日に出勤した労働者には、労働基準法37条1項で定められた割増賃金を支払う必要があります。

    そして、労働基準法35条の定める休日を「法定休日」といいます。労働基準法37条1項に定められているとおり、割増賃金は、法定休日に働かせた場合に支払われますので、法定休日以外の所定休日に働いたとしても割増賃金は発生しません

    ちなみに、所定休日とは、法律によって付与が義務付けられているものではないが、使用者の判断で労働者に付与されている休日のことです。

    例えば、日曜日と土曜日の週休2日の休みがある会社の場合、特に法定休日をしていないのであれば、最初の休日が所定休日、2日目の休日が法定休日と一般的に考えられます。

    そして、暦週の場合、1週間の始まりは日曜日からとなりますので、日曜日が所定休日、土曜日が法定休日と考えられます。上記のような場合に4週続けて日曜日に出勤し続けたとしても、所定休日に出勤していることになりますので、法定休日の割増賃金は発生しません。(※もっとも、1週間に40時間を超えて労働している場合には、通常の時間外労働の割増賃金は発生します)。

    逆に、上記のような場合に4週続けて土曜日に出勤し続けたら、法定休日に出勤していることになりますので、法定休日の割増賃金は発生します。

    どちらも週に1日休んではいるものの、出勤した日が法定休日なのか所定休日なのかで割増賃金の発生が異なってきますので、注意が必要です。

    なお、法定休日に出勤した場合には、35%以上の割増率によって割り増しした賃金を支払う必要がありますので、休日出勤手当として、通常の賃金の1.35倍の金額が支払われます。

  2. (2)代休を取得した場合でも割増賃金の支払いは必要

    代休を取得することによって、休日出勤をした日の休日が事後的に補填(ほてん)されることになりますので、代休を取得した場合には、割増賃金の支払いが必要ないと考える方もいるかもしれません。

    しかし、代休を取得したとしても、法定休日に出勤した事実がなくなるわけではありません。

    また、休日出勤に対する割増賃金の支払い義務を免れるためには、後述する振替休日を利用する必要があるところ、振替休日よりも要件が緩和されている代休で割増賃金の支払いを免れることができるとなれば、恣意的な運用によって労働者に不利益が及ぶおそれもあります。

    そのため、代休を取得したとしても、休日出勤に対する割増賃金の支払いは必要となります

3、休日出勤分の割増賃金を削減する方法はあるのか

代休を取得させたとしても休日出勤の割増賃金の支払い義務が生じてしまいます。これを避ける方法として振替休日があります。

  1. (1)振替休日とは

    会社の休日が法定休日に当たると考えられる場合でも、当該休日をあらかじめ出勤する日として労働日に変更し、その代償として本来出勤が予定されている日を休日とすることで、それが週に1回または4週に4回以上の休日を付与できるように調整ができていれば、労働者が法定休日に出勤したことにはならないため、法定休日の割増賃金の支払いを回避することができます。これを、振替休日といいます。

    このように、振替休日を利用することによって、会社の休日が法定休日に当たると考えられる日であっても、本来出勤が予定されている労働日として取り扱うことができます。

    代休も振替休日も休日出勤の代償として所定の労働日を休日に変更するという点では共通する制度です。

    しかし、代休は、休日出勤を行った後、事後的に休日を与える制度であるのに対して、振替休日は、休日と労働日と交換する制度であるという違いがあります。

  2. (2)振替休日の要件

    振替休日は、割増賃金の支払い義務を免れるという効果を生じさせるものですが、割増賃金の支払い義務を免れるためには、以下の要件を満たす必要があります。

    ① 就業規則などで振替休日の定めをおくこと
    振替休日は、会社と労働者との間の契約で定められた休日を労働日に変更するというものですので、労働者との合意によって行うのが原則となります。

    ただし、就業規則などで休日を振り替えることがある旨規定されている場合には、就業規則を根拠として振替休日を利用することが可能です。個別の合意を得るのは非常に煩雑な手続きとなりますので、就業規則などで振替休日の定めをおいておくことをおすすめします

    ② 出勤日と休日をあらかじめ特定すること
    振替休日を利用するためには、あらかじめ交換する休日と労働日を特定しておく必要があります。本来休日であるが出勤しなければならない日はいつであるか、休日として振り替えられる日がいつであるかを特定し、遅くとも出勤の前日までには、労働者にその旨伝えることが必要になります。

    ③ 法定休日が確保されること
    振替休日を利用したとしても、労働基準法上の振替休日の規制がなくなるわけではありません。そのため、振替休日を利用したとしても週に1回または4週に4回という法定休日が確保されていることが必要となります。

    休日の振り替えがかなり先になってしまうと法定休日の確保が難しくなることもありますので、できる限り出勤日に近い日に振替休日を設定するとよいでしょう。
  3. (3)振替休日を与える場合の注意点

    労働基準法では、1日8時間、週40時間を法定労働時間と定めており、法定労働時間を超えて働かせた場合には、25%以上の割増賃金率によって割り増しした賃金を支払う義務が生じます。

    振替休日を利用して休日の振り替えをする場合に、週をまたいで休日の振り替えをすることになると、時間外労働に対する割増賃金が生じる可能性がありますので注意が必要です。

    たとえば、ある週の月曜日から金曜日まで1日8時間働いた後、土曜日に休日出勤をした場合には、その週は48時間働いたことになります。翌週に休日の振り替えをしたとしても、時間外労働に対する割増賃金の支払いを免れることはできません。

    時間外労働に対する割増賃金の発生を抑えたいという場合には、週をまたがずできる限り1週間の中で休日の振り替えを行っていくことをおすすめします。

4、運用において会社が注意するべきこと

代休制度を運用する場合には、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)代休制度を就業規則などでルール化する

    代休制度は、法律上の制度ではありませんので、代休制度を採用するかどうか、採用するとしてどのような制度にするのかについては、各企業が独自に決めることができます。

    就業規則への記載が必須というわけではありませんが、代休制度を設ける場合には、ルールに従って適切に運用していくためにも就業規則などで詳しいルールを定めておくべきでしょう。

    代休制度を設けることは、労働者のモチベーションの向上にもつながりますので、まだ代休制度を整備していないという会社においては積極的に導入を進めていくとよいでしょう

  2. (2)代休の取得期限の明記

    有給休暇とは異なり、代休には取得期限はありません。しかし、代休には、休日出勤をした疲れをとるという意味がありますので、できる限り休日出勤と近接した時期に取得させるのが望ましいといえます。

    そこで、労働者に対して、代休取得を促すという意味でも就業規則などで代休の取得期限を設けることをおすすめします。代休の取得期限を設けることよって、代休の累積による労務管理の負担も避けることができますので、会社としてもメリットが大きいといえます

5、まとめ

休日労働をした代償として後日代休を取得させたとしても、休日労働に対する割増賃金の支払い義務がなくなるわけではありません。休日労働に対する割増賃金の支払いを避けたいという場合には、振替休日を利用するようにしましょう。

ただし、振替休日を利用する場合には、あらかじめ労働日と休日を特定しなければならないなどの要件がありますので、これらの要件を正確に理解して運用することが大切です。

代休制度や振替休日の利用をお考えの企業の担当者の方は、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスまでお気軽にご相談ください。制度設計や運用について専門的見地からアドバイスをいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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