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適法な解雇理由とは? 会社が知っておくべき解雇が適法になる条件(要件)

2022年06月23日
  • 一般企業法務
  • 解雇条件
適法な解雇理由とは? 会社が知っておくべき解雇が適法になる条件(要件)

山梨県の毎月勤労統計調査によると、2022年3月の山梨県内に所在する事業所(事業所規模5人以上)における労働者1人当たりの現金給与総額は25万6930円(賞与等含む)で、前年同月比3.2%の減少となりました。

労働者にとって給与は安定した生活をおくる上で欠かせないものです。そのため、会社が安易に従業員を解雇すると、従業員から解雇無効を主張されてトラブルに発展するおそれがあります。

会社経営者や人事の担当者は、懲戒解雇・整理解雇・普通解雇の各要件を踏まえて、適法に解雇を行うための条件を満たしているかどうか、慎重に確認しなければなりません。

今回は法律上の解雇要件、適法に解雇を行うことができる場合の具体例、会社にとっての解雇無効のリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。

参考:「山梨の賃金・労働時間及び雇用の動き」(山梨県)

1、解雇のパターンは3種類

解雇には、「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の3種類があります。

【解雇の種類】
① 懲戒解雇
従業員の就業規則違反を理由に、懲戒処分の一類型として行われる解雇です。

② 整理解雇
会社の経営不振などを理由に、人件費削減の目的で行われる解雇です。

③ 普通解雇
懲戒解雇と整理解雇以外の解雇です。


3種類の解雇いずれについても、「解雇権濫用の法理」(労働契約法第16条)が適用されます。

労働契約法第16条は、「客観的に合理的な理由を欠き、かつ社会通念上相当と認められない解雇は無効となる」と定めています

さらに各解雇を行う際には、次章で説明するように個別の要件を満たさなければなりません。各個別要件を満たさずに行われた解雇は、やはり違法・無効となるので注意が必要です。

2、適法に解雇を行うための要件

懲戒解雇・整理解雇・普通解雇のそれぞれについて、適法に解雇を行うための要件を整理しておきましょう。

  1. (1)懲戒解雇の要件

    懲戒解雇の要件は、以下の2つです。

    ① 就業規則上の懲戒事由に該当すること
    就業規則に明記された懲戒事由のうち、少なくともひとつに該当していなければなりません。
    懲戒解雇以外の懲戒処分(諭旨解雇、降格、出勤停止、減給、戒告等)についても同様です。

    ② 解雇理由が客観的に合理的であり、かつ社会通念上相当であること
    解雇権濫用の法理に基づく要件です。
    懲戒解雇の客観的合理性・社会的相当性は、懲戒事由に該当する行為の悪質性や、改善指導の結果などを考慮して判断されます。
  2. (2)整理解雇の要件

    整理解雇の適法性は、解雇権濫用の法理を具体化する形で、以下の4つを総合的に考慮して判断されます。

    ひとつでも満たさなければ直ちに整理解雇が違法・無効というわけではありませんが、基本的には各要素を満遍なく、高い水準で満たしていることが求められます

    ① 整理解雇の必要性
    経営不振の程度が著しく、整理解雇がやむを得ないと評価すべき状態であることが求められます。

    ② 解雇回避努力義務の履行
    経費節減・役員報酬の減額・希望退職者の募集・出向・一時帰休・新規採用の削減など、他の手段を最大限尽くしたことが求められます。

    ③ 被解雇者選定の合理性
    解雇される従業員は、客観的に合理的な基準に基づいて、公正に選定する必要があります。

    ④ 解雇手続きの妥当性
    対象者および労働組合等と十分に協議を行い、整理解雇について労働者側の納得を得るための努力を尽くしたことが求められます。
  3. (3)普通解雇の要件

    普通解雇の要件は、以下の通りです。

    ● 解雇理由が客観的に合理的であり、かつ社会通念上相当であること
    解雇権濫用の法理に基づく要件です。普通解雇の客観的合理性・社会的相当性は、事案によって判断されます。

3、適法に解雇を行うことができる場合の具体例

懲戒解雇・整理解雇・普通解雇の要件を踏まえて、適法に解雇を行うことができる場合の具体例を3つ紹介します。

  1. (1)就業規則に定められた懲戒解雇事由に該当した場合

    一般的に、懲戒解雇になるほどの事由は、就業規則に懲戒解雇事由として定められていますので、これに該当した場合には適法な懲戒解雇と判断されるでしょう。

    たとえば、

    • 窃盗や横領、傷害など、刑法犯に該当する行為があった場合
    • 賭博などによって職場規律や風紀を乱し他の労働者に悪影響をおよぼす場合
    • 当該業務に必要となる資格や免許を有していないなどの経歴詐称
    • 正当な理由なく2週間以上無断欠勤して出勤の督促にも応じない場合

    です。

    例のように懲戒解雇としても妥当だと思われるような懲戒解雇事由が定められていれば、その違反が認められれば懲戒解雇は適法とされるでしょう。

    従業員の就業規則違反に対しては、原則として戒告・減給などの軽い懲戒処分から段階的に引き上げていき、懲戒処分は最後の手段と位置付けるのが適切でしょう。

  2. (2)再三の改善指導にもかかわらず、改善が見られない場合

    懲戒解雇事由に該当しない場合であっても、会社側から再三にわたり注意を受け改善を促されたにもかかわらず、改善が見られない場合には、客観的合理性・社会的相当性のある普通解雇として認められる可能性があります。

    この場合、一回の注意や指導を受けただけでは、普通解雇が適法となる可能性は低いです。

    ただし、普通解雇が適法かどうか、判断が微妙なケースも想定されます。不当解雇を巡るトラブルの発生を予防するためにも、普通解雇を行う際には、事前に必ず弁護士へ相談することがおすすめです

  3. (3)会社の経営状態が悪化し、整理解雇以外に打つ手がない場合

    整理解雇が認められるのは、他のあらゆる手段を尽くしても経営危機を回避できない場合に限られます。

    前述の整理解雇の4要件を踏まえて、経営危機を脱却するためにとり得る選択肢が他にない場合には、整理解雇を検討すべきでしょう。

    ただし、整理解雇を実施するにしても、被解雇者を選定する基準の策定や、労働者側との協議などの手続きを経る必要があります。適法に整理解雇を実施するための準備・手続きについては、弁護士へのご相談を強くおすすめします。

4、解雇が無効となった場合に会社が負うリスク

従業員から不当解雇を主張され、労働審判や訴訟を通じて解雇が無効と判断された場合、会社は以下のリスクを負うことになってしまいます。

  1. (1)従業員の復職を認める必要がある

    解雇が無効となった場合、従業員の復職を認めなければなりません。

    ただ、大抵の場合、裁判で争ってまでケンカした中ですから、復職して通常通り業務を行うことは不可能であり、結局、後記(2)の未払の賃金全額とは別に、従業員が合意退職に納得するほどの金銭を支払って、合意退職に至ることが多いです。

    すなわち、会社としては、判決で従業員に支払うよう認められた金額とは別に、さらに余計な出費がかかってしまうことになりかねません

  2. (2)解雇期間中の賃金全額を支払う必要がある

    解雇期間中に従業員が就労できなかったのは、会社が解雇を告げ、もう働きに来なくて良いと従業員に示したことが原因です。

    したがって、従業員としては労務を提供する意思があったにもかかわらず、会社側が従業員から労務を提供されることを拒んだことになりますから、従業員に非はなく、以前として、会社は従業員に対して、解雇期間中の賃金全額を支払う義務を負います。

    労働審判や訴訟の手続きが長引いた場合、解雇期間も数か月から1年以上に及ぶ可能性があります。その間、全く働いていない従業員に対して多額の賃金を支払うことは、会社にとって大きな損失でしょう。

  3. (3)多額の解決金の支払いを強いられる可能性がある

    従業員と和解して退職を受け入れてもらうとしても、その代償として、会社は従業員に対して、(解雇予告手当に加えて)多額の解決金(退職金)を支払うケースが多いです。

    解決金額は賃金水準や勤続年数などによりますが、おおむね何カ月分相当の賃金という形で、月額の賃金が目安となります。

    いずれにしても、不当解雇を巡る紛争に発展した時点で、会社が多額の損失を被る可能性はきわめて高いと言わざるを得ません。不当解雇に関する従業員とのトラブルをできる限り予防するためにも、従業員を解雇する際には、事前に弁護士へ相談しましょう。

5、まとめ

懲戒解雇・整理解雇・普通解雇を行う際には、対応する要件を満たしているかどうか確認することが大切です。

解雇条件を満たしていないにもかかわらず解雇をしてしまうと、従業員との間で不当解雇を巡る紛争に発展し、会社が多額の損失を被る事態になりかねません。もし解雇したい従業員がいる場合には、ご相談いただき、解雇の適法性を慎重に検討することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスは、労働基準法や解雇などの労働問題につき、企業の担当者さまを対象に法律相談を受け付けております。解雇したい従業員がいるものの、不当解雇に関するトラブルは避けたいとお考えの企業経営者・担当者の方は、まずは当事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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