交通違反をしてしまったとき、警察からの呼出状を無視したらどうなる?
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山梨県警察が公表しているデータによると、令和4年(2022年)に山梨県内で発生した交通事故は2019件で、死者25人・負傷者2516人でした。交通事故の発生件数・死者数・負傷者数のいずれも前年比で減少を示しましたが、依然として、25人という決して少なくない人数が交通事故で尊い生命を失っているという現状もあります。
交通事故の抑止のためには、取り締まりが必要だといわれます。交通取り締まりの強化に交通事故を減少させる効果があることは研究によって実証されているので、これからも、交通事故の厳しい取り締まりは続くでしょう。とくに悲惨な交通事故へとつながりやすいスピード違反については、各警察署が取り締まりを強化している状況です。
本コラムでは、スピード違反などを犯して警察から「呼出状」が届いたときの対応について、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。
1、交通違反に関する「呼出状」とは? どんなときに送られてくる?
交通違反を犯すと、警察から「呼出状」が送られてくることがあります。
まずは、呼出状とはどのようなものなのか、どんなときに送られてくるのかなどの概要を解説します。
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(1)呼出状とは?
警察から送られてくる「呼出状」とは、交通違反を犯した疑いのある者に対して「警察に出頭してほしい」と通知する書面を指します。
ほかの刑事事件においても呼出状が送付されることがありますが、とくに交通違反については「出頭通知書」や「出頭示達書」という表題のハガキ・書面が送られてくるのが一般的です。
また、書面ではなく、自宅の電話や取り締まりを受けた際に供述した携帯電話番号に電話がかかってきて出頭を求められることもあります。 -
(2)呼出状が送られてくるのはどんなときなのか?
交通違反について呼出状が送られてくるのは、交通違反の処理が終了していないときです。
たとえば、自動速度違反取締装置、いわゆる「オービス」による取り締まりを受けたときや、取り締まりを受けたもののその場で異議を唱えて違反切符への署名や押印を拒否したとき、反則金を納付せず相当な期間にわたって放置しているときなどには、呼出状が送られてくる可能性があります。
2、道路交通法違反事件の呼出状を受け取った場合の正しい対応
交通違反は、単なるルール違反やマナー違反ではりません。
交通ルールは「道路交通法」などの法律によって定められており、これに反すると道路交通法違反などの刑事事件として扱われます。
一般的に、交通違反を犯して違反切符を交付されると、反則金を納付することで事件は終了しますが、これは軽微な交通違反について反則金を納付することで本来の刑事手続を省略できる「交通反則通告制度」の運用によるものです。
そして、呼出状が送られてきたということは、交通反則通告制度の対象外か、あるいはまだ交通反則通告制度による処理が終わっていないという状況を意味します。
以下では、交通違反について呼出状を受け取った場合にとるべき対応を解説します。
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(1)正当な理由なく無視してはいけない
まず理解しておくべきなのは「呼出状が送られてきたら無視してはいけない」ということです。
呼出状に「かならず出頭せよ」という強制力はありませんが、正当な理由なく無視していると、逮捕される可能性が増します。
なお、基本的に、仕事の都合や個人的なスケジュールは「正当な理由」に該当しません。
ここでいう正当な理由とは、病気やケガなどで入院している、遠方に居住しているなどのやむを得ない理由のことを指します。
ただし、呼出状に強制力はないため、仕事の都合や個人的なスケジュールを優先させたからといって、ただちに逮捕されたり刑罰を受けたりすることはありません。
指定された期日での出頭が難しい場合には、呼出状に記載されている連絡先にその旨を伝えて、期日を変更してもらいましょう。 -
(2)当日は呼出状や違反切符を持参する
呼出状に応じて出頭する際は、送られてきた呼出状、交付された違反切符、運転免許証、印鑑を持参してください。
なお、取り締まりを受けた際に警察に運転免許証を保管された場合は、運転免許証は不要です。 -
(3)呼出当日の流れ
呼出状によって指定された場所が警察署の場合は、警察署の交通課を訪ねることになります。
基本的には、交通違反の事実について取り調べが行われ、違反を認める場合は違反切符と反則金の納付書を交付される流れになるでしょう。
警察署で反則金を納付すれば、その後の刑事処分はありません。
高速道路上で自動速度取締装置による取り締まりを受けた場合は、警察署ではなく高速道路交通警察隊の分駐隊への出頭が指定されることもありますが、ここでの流れも警察署と同じです。
指定された出頭場所が検察庁や裁判所の場合には、当日に略式裁判を受けることになるでしょう。
略式裁判では、検察官による取り調べを受けたのち、違反を認めて略式手続を受け入れる旨を伝えると、裁判官から罰金の略式命令が言い渡されることになります。
その場で罰金を支払えない場合は後日納付書が郵送されるので、指定期日までに納付してください。
また、違反の事実を認めない場合には、略式手続を拒否することになります。
ただし、この場合は正式な刑事裁判へと移行してしまうため、むやみに否認すればよいというわけではないことに注意してください。
3、呼出を受けやすい交通違反の種類と罰則
街頭で交通取り締まりを受けたときは、違反切符による処理を受けたのちに、反則金を納付するだけで終了するのが一般的です。
わざわざ呼出状が送られてきたり、電話がかかってきて警察署などに呼び出されたりするほうが珍しいといえます。
以下では、呼出を受けやすい交通違反の種類や、それらの罰則を紹介します。
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(1)スピード違反
後日になって呼出状が送られてくる交通違反のなかでも、とくに代表的なものが、速度超過違反、いわゆる「スピード違反」です。
オービスによる取り締まりを受けたときは、後日に呼出状が郵送されて、違反をした場所を管轄する警察や高速道路交通警察隊の分駐所への出頭を求められます。
出頭するとオービスが撮影した写真を示されて、運転していたのが自分で間違いないかを確認したうえで、違反に関する取り調べが行われます。
スピード違反は、一般道では時速30キロメートル未満まで、高速道路では時速40キロメートル未満までの超過であれば交通反則通告制度の対象です。
この制限を超えると交通反則通告制度は適用されず、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
違反点数は、以下のとおりです。一般道 高速道路 時速20キロメートル未満 1点 1点 時速20キロメートル以上25キロメートル未満 2点 2点 時速25キロメートル以上30キロメートル未満 3点 3点 時速30キロメートル以上40キロメートル未満 6点 3点 時速40キロメートル以上50キロメートル未満 6点 6点 時速50キロメートル以上 12点 12点
過去に交通違反や行政処分の経歴がなくても、一般道では時速30キロメートル、高速道路では時速40キロメートルを超過すると一発で運転免許が停止されてしまいます。
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(2)飲酒運転
いわゆる「飲酒運転」は、体内に保有しているアルコールの量や酔いの程度によって「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に区別されます。
体内に基準値以上のアルコールを保有した状態の場合は「酒気帯び運転」です。
酒気帯び運転には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
また、アルコールの保有量にかかわらず、酒に酔って正常に運転できないおそれのある状態の場合は「酒酔い運転」となります。
酒酔い運転の罰則は酒気帯び運転よりもさらに厳しく、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
飲酒運転は交通反則通告制度の対象外であるため、違反切符での処理だけでは済まされず、検察庁や裁判所へと呼び出されることになるでしょう。
また、他人の飲酒運転について、「自動車を運転することを知っていたのに酒類を提供した」「飲酒したことを知っていたのに車両を提供した」などの疑いがある場合には、警察署に呼び出されて取り調べを受けることになります。
飲酒運転の違反点数は、以下のとおりです。- 酒気帯び運転:呼気1リットルあたりのアルコール濃度が0・15ミリグラム以上0・25ミリグラム未満なら13点、0・25ミリグラム以上は25点
- 酒酔い運転:35点
酒気帯び運転の場合には軽く済んでも90日間の免許停止となり、アルコール濃度が0・25ミリグラム以上または酒酔い運転なら確実に免許が取り消されてしまいます。
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(3)無免許運転
無免許運転には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
無免許運転の疑いがあれば警察署に呼び出されて取り調べが行われるほか、飲酒運転と同じく交通反則通告制度の対象外であるため、検察庁や裁判所にも呼び出されることになるでしょう。
また、他人の無免許運転について「無免許だと知っているのに車両を提供した」「無免許運転の車両に同乗した」といった疑いがある場合にも、やはり警察署に呼び出されて取り調べが行われることになります。
違反点数は、過去に行政処分を受けたことがまったくない場合で25点です。
たとえば免許停止中に自動車を運転すると無免許運転になり、取消処分を受けます。
さらに、最短でも2年間は運転免許の再取得が認められなくなるのです。
4、呼出を受けて逮捕されることはあるのか?逮捕を避けるためにできること
警察からの呼出状が届いたら、身に覚えがあってもなくても、不安に感じるものでしょう。
とくに「交通違反の件」といわれている状況の場合には、「逮捕されるのではないか」という恐れを抱く方もおられると思います。
以下では、警察からの呼出に応じて出頭するとそこで逮捕されることはあるのかどうかや、逮捕に不安を感じている場合はどのように対応すればよいのかについて解説します。
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(1)悪質な違反やその場から逃亡した場合は逮捕される可能性もある
警察が呼出状を送るなどして違反者を呼び出すのは、取り調べを行い違反の事実を確認するためです。
逮捕の要件である「逃亡または証拠隠滅のおそれ」を否定できると考えられる状況なら、呼出を受けて素直に出頭することで逮捕の可能性は低くなります。
しかし、悪質な違反や現場から逃亡してナンバープレートなどから違反者として特定されたといった場合には、まずは呼出をかけて取り調べを行い、違反を認める自供を得たうえで逮捕状を請求する、といった捜査手法もあります。
そのため、「逮捕されることはない」と断定できるわけではないのです。 -
(2)不安を感じたら弁護士に相談を
警察からの呼出に不安を感じているなら、まずは弁護士に相談してください。
交通関係の法令や交通事件に詳しい弁護士に相談すれば、これからの流れや、警察による取り調べでの受け答えなどについてアドバイスを得ることができます。
また、警察への出頭に不安があるなら、弁護士による同行も可能です。
呼出を受けて出頭した段階では、強制力のある取り調べはできません。
任意の取り調べでは自由に途中退席が認められるので、警察官からの質問で受け答えに迷ったときは庁舎内で待機している弁護士に相談してアドバイスを受けることができます。
不当な取り調べの抑止や逮捕の阻止にもつながるので、逮捕の不安が強い場合には、弁護士に同行を求めることをおすすめします。
さらに、まったく身に覚えのない交通違反の疑いをかけられてしまった場合は、安易に違反切符や供述調書に署名や押印をしたり、警察官が「違反を認めた」と曲解するような曖昧な供述をしたりしてしまうと、いわれのない罪を着せられてしまうおそれがあります。
否認を貫いて無実を示すためは法的な知識や証拠の収集が欠かせないため、専門家である弁護士のサポートを受けましょう。
5、まとめ
スピード違反などの交通違反を犯すと、後日になって「呼出状」が送られてくることがあります。
呼出状に法的な強制力はありませんが、無視していると逮捕されてしまう可能性が増すので、むやみに無視してはいけません。
呼出状に応じて警察署などに出頭すると、交通違反に関する取り調べが行われます。
疑いをかけられている交通違反について身に覚えがあるなら、まずは弁護士に相談して今後の対応についてアドバイスを受けることをおすすめします。
また、身に覚えのない交通違反の疑いをかけられた場合にも、いわれのない罪を着せられることを回避するために弁護士のサポートを受けることが大切です。
交通違反を含めた刑事事件の解決は、ベリーベスト法律事務所におまかせください。
経験豊富な弁護士が、正確に状況を判断したうえで、最適なアドバイスやサポートを行います。
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