天ぷらナンバーが発覚したとき問われる罪は? 処罰の内容も解説
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自動車のナンバープレートには登録した管轄地などの情報が表示されています。甲府市・山梨市などで登録すると「山梨」ナンバー、富士吉田市などで登録すると「富士山」ナンバーのいずれかになり、続いて分類番号や用途、一連指定番号などが表示される仕組みです。
自動車は、正規の手続きを経た有効なナンバープレートを装着していなければ公道を走ってはいけません。しかし、「天ぷらナンバー」と呼ばれる不正なナンバーで走行し、警察に発覚して摘発されてしまうケースもあります。
本コラムでは「天ぷらナンバー」の意味や使用することで問われる罪などを、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。
1、「天ぷらナンバー」とは? 意味や判別方法
まずは「天ぷらナンバー」とはどんなものであるか、概要を解説します。
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(1)天ぷらナンバーの意味
「天ぷらナンバー」とは、登録された自動車の情報とナンバープレートの情報がひも付けされていない、不正なナンバープレートを指す俗称です。
「天ぷら」は衣をつけて油で揚げる料理で、食べてみないと衣の下にどんな食材が隠れているかわかりません。
そこから、「外見と中身が異なる」という意味で、不正なナンバープレートのことを天ぷらナンバーと呼ぶことがあります。
自動車を使用するには、陸運支局や軽自動車検査協会で登録して交付されたナンバープレートを装着しなければなりません。
この運用は「自動車が正しく登録されていること」と「登録時の保安基準適合性をクリアしていること」を証明すると同時に、保管場所の登録や自賠責保険への加入、自動車重量税などの納付といった手続きも行われていることを推定させるための役割も担います。
また、本来の役割とは異なりますが、交通事故の統計、交通違反・事故における車両の特定、自動車が犯罪で使用されたときの被疑者特定などにも利用されているのです。
このようにナンバープレートは重要な役割をもっていますが、たとえば別の自動車から取り外したナンバープレートを流用したり、偽造・変造したりといった行為があった場合には、その役割を果たせなくなってしまいます。
そのため、天ぷらナンバーを取り付けて公道を走る行為や、天ぷらナンバーを製造する行為は、法律によって厳しく禁じられているのです。 -
(2)天ぷらナンバーはなぜバレるのか? 判別方法はある?
実際に天ぷらナンバーを使用しても、その名のとおり外見上は正規のナンバープレートを装着しているように見えるため、見た目だけでは判別できません。
しかし、警察では、交通事故や交通違反の現場、職務質問などの機会に自動車のナンバープレートを確認しています。
たとえば「私の車だ」と説明しているのに、現場で登録情報を照会すると別人の登録であることが判明して、天ぷらナンバーであることが発覚するといったケースが典型的です。
また、一般の人が天ぷらナンバーに気が付いて警察に通報するケースもあります。
令和4年10月には、愛知県内でスポーツタイプの自動車が盗難被害に遭ったものの、別の地域で「偽造ナンバーではないか?」という通報があり、被疑者が特定された事例がありました。
この事例では、大排気量のスポーツタイプの自動車なのに、2000cc以下の自動車を分類する、いわゆる「5ナンバー」のナンバープレートが装着されていたため、天ぷらナンバーであることが発覚しています。
2、天ぷらナンバーに関連して問われる罪
以下では、天ぷらナンバーに関連して問われる罪を紹介します。
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(1)偽造・変造によって天ぷらナンバーを製造した場合
自動車に取り付けて使用する目的でナンバープレートを偽造したり、もともと存在するナンバープレートの一部を変造したりするといった行為は、道路運送車両法第98条1項に違反します。
同条は「不正使用等の禁止」を定めており、いわゆるナンバープレートを指す「自動車登録番号標」などの偽造・変造のほか、これに似た紛らわしい外観を有する物の製造も禁止しています(同条2項)。
これらの法律の罰則は、以下のとおりです。- 第98条1項(偽造・変造)違反:
3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、またはこれらを併科(第106条)
- 第98条2項(紛らわしい外観を有する物の製造)違反:
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第106条の5)
なお、これらは一時停止違反やシートベルト不着装などの軽微な交通違反のように切符処理されて違反点数が加算される「交通反則通告制度」の対象には含まれていません。
交通反則通告制度に該当する違反は、罰則金を納付することで刑事責任を問われないという仕組みになっていますが、天ぷらナンバーに関する罪はこの制度の対象外となっており、たとえば窃盗や暴行といった犯罪と同じように扱われて捜査の対象となります。 - 第98条1項(偽造・変造)違反:
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(2)天ぷらナンバーを取り付けた場合
偽造・変造したナンバープレート、ナンバープレートに似た紛らわしい外観を有する物を自動車に取り付けて使用すると、同じく道路運送車両法第98条1項・2項の違反になります。
罰則は偽造・変造・紛らわしい外観を有する物の製造と同じです。
また、別の自動車からナンバープレートを流用して使用すると同条3項の違反になります。
たとえば、自分の車が車検切れになったからといって、車検が有効な安い中古車を購入してナンバープレートを取り換えたといった行為は本項の違反となります。
同条3項の違反にあたる場合は、50万円以下の罰金が科せられます(第109条1号)。
当然、こちらの違反も交通反則通告制度の対象外であるため、犯罪として厳しい扱いを受ける事態は免れられません。
3、警察に発覚するとどうなる? 刑事事件の流れ
以下では、天ぷらナンバーの自動車を使用していることが警察に発覚した場合の刑事事件の流れを解説します。
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(1)現行犯で発覚しても逮捕されるとは限らない
天ぷらナンバーの自動車の使用は、おもに交通違反・事故や職務質問などの機会に発覚します。
なお、その場で発覚したとしても、必ずしも現行犯逮捕されるわけではありません。
たとえば、その場から逃亡する気配を見せたり、免許証の提示を拒むなど住居や氏名を明らかにしようとしなかったりすると現行犯逮捕される可能性が高まります。
一方で、抵抗せず素直に捜査に応じる姿勢を見せれば、逮捕を伴わない任意の在宅事件として処理される可能性が高くなるのです。
もっとも、他人のナンバープレートを盗んで手配されていたなど、悪質性が高い場合は逮捕の危険が高まると心得ておいてください。
また、一般の人から「不正なナンバープレートを使用している車を見つけた」などの通報があったり、パトロール中の警察官が不審に感じて確認したところ天ぷらナンバーであることが発覚したりしたといった場合には、実際に走っているところを現認されていなくても、警察が捜査を進めて逮捕状を請求して逮捕されてしまうことがあります。 -
(2)逮捕されると最大23日間にわたる身柄拘束を受ける
警察に逮捕されると、警察の段階で最長48時間、検察官のもとへと送致されて最長24時間の身柄拘束を受けます。
ここで検察官が「さらに身柄を拘束して捜査を進めるべき」と判断すると勾留請求され、裁判官がこれを許可すると10~20日間の勾留を受けるため、逮捕から数えると身柄拘束の期間は最大23日間にわたります。
逮捕・勾留による身柄拘束を受けている期間は、自宅へ帰ることも、会社へ通うことも許されません。
たとえ相手が家族であっても、面会を除き、電話などで連絡することさえ許されず、社会から隔離された状態が続くのです。 -
(3)検察官が起訴すると刑事裁判に発展する
勾留の満期を迎える日までに、検察官が起訴・不起訴を判断します。
起訴されると刑事裁判の被告人としてさらに勾留が続くため、保釈が認められなければ、刑事裁判が終わる日まで釈放されません。
また、天ぷらナンバーに関する罪には懲役を規定しているものもあるので、判決次第では刑事裁判が終わっても釈放されず、そのまま刑務所へと収監されてしまう危険もあります。
一方で、不起訴となった場合は、刑事裁判が開かれないので身柄拘束の必要もありません。
即日で釈放となり、その後も刑事責任は追及されず事件が終了します。
4、警察から連絡がきたらまずは弁護士に相談を
天ぷらナンバーの製造や使用の容疑をかけられてしまい、警察から「事情を聴きたい」という連絡がきたら、まずは急いで弁護士に相談してください。
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(1)逮捕を避けるための弁護活動が期待できる
天ぷらナンバーの製造や使用は、軽微な交通違反とは異なり、刑事事件としての捜査を受ける犯罪です。
捜査のために必要があると判断されれば逮捕されてしまう事態も考えられますが、素直に出頭して事情を説明し、証拠の提出にも応じる姿勢を示せば、逮捕を回避できる可能性は高いでしょう。
とはいえ、すでに犯罪の容疑が濃厚な状況なら、警察は「自白によって確証を得たうえで逮捕状を請求しよう」と考えている可能性もあります。
逃げ隠れするつもりも、証拠隠滅を図るつもりもないのに逮捕されてしまう事態を回避するには、弁護士が同行して出頭に応じるという対策が考えられます。
弁護士が同行して警察に「逃亡・証拠隠滅を図る意思はなく、取り調べや証拠提出の求めには素直に応じる」という姿勢を伝えれば、逮捕の必要性を否定できる可能性が高まります。
また、取り調べ中は弁護士が庁舎内に待機するため、「取調官からの質問に対して返答に迷ったのでアドバイスが欲しい」「暴行や暴言といった不当な行為があったので抗議したい」といった場合にも、直ちに対応することができます。 -
(2)不当に重い処分を避けるための弁護活動が期待できる
天ぷらナンバーの製造や使用には、厳しい罰則が定められています。
ナンバープレートを偽造・変造していたり、天ぷらナンバーを装着して公道を走っていたりした事実があれば、刑事裁判で無罪になる可能性はほとんどありません。
ただし、強盗などを犯したうえで逃走のために偽造・変造したナンバープレートを使ったなど極めて悪質性が高いケースでなければ、法律が予定している罰則のなかでも最大の刑罰が課せられることは避けられる可能性が高いです。
本人が深く反省しており、「二度と同じような罪は犯さない」と誓っているなど情状の余地があることを示せれば、処分が軽くなる可能性もあるでしょう。
弁護士に相談すれば、不当に重い処分を避けるための弁護活動を行うことができます。
裁判官が量刑を判断するにあたり有利に傾きやすい事情を集めて主張するなど、処分を軽減するための対応を弁護士に依頼することができるのです。
5、まとめ
偽造・変造・ほかの自動車からの流用などによる不正なナンバープレートのことを、俗に「天ぷらナンバー」と呼びます。
天ぷらナンバーの製造や使用は道路運送車両法の違反にあたるため、警察に発覚すれば厳しい追及を受けることになるでしょう。
天ぷらナンバーの製造・使用などで容疑をかけられてしまった方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、逮捕の回避や処分の軽減を実現するための対応を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています