工場勤務の毎日残業は違法? 残業を強要された場合の対処法

2024年10月24日
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工場勤務の毎日残業は違法? 残業を強要された場合の対処法

2022年度に山梨県内の労働基準監督署が監督指導を行った447事業場のうち、違法な時間外労働があったのは206事業場でした。

工場勤務の労働者が毎日残業している場合、企業側の労働基準法違反の可能性が疑われます。ご自身の労働環境が違法かもしれないと感じた場合は、弁護士への相談をご検討ください。

本記事では、工場労働者が毎日残業することが違法となるケースや、不本意な残業を指示された場合の対処法などをベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。

出典:「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」(山梨労働局)


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1、工場労働者が知っておくべき「法定労働時間」

製造業や食品加工業などの工場で働く労働者の残業については、当然に労働基準法のルールが適用されます。正社員だけでなく、期間工やパート・アルバイトなどについても同様です。

労働基準法のルールの中では、特に「法定労働時間」についての規制が重要なので、正しく理解しておきましょう。

  1. (1)法定労働時間とは

    「法定労働時間」とは、労働基準法によって定められた労働時間の上限です。

    法定労働時間は原則として、「1日当たり8時間・1週間当たり40時間」とされています(労働基準法第32条)。

    ただし、特殊な労働時間制(変形労働時間制・フレックスタイム制など)を採用している場合は、異なる法定労働時間が適用されることがあります。

  2. (2)法定労働時間を超えて労働者を働かせるには「36協定」の締結が必要

    使用者が法定労働時間を超えて労働者を働かせるには、「36協定」と呼ばれる労使協定の締結が必要です(労働基準法第36条第1項)。

    36協定は、使用者と事業場の労働者の過半数が参加する労働組合、または事業場の労働者の過半数を代表する者との間で書面により締結します。

    36協定では、法定労働時間を超える労働(=時間外労働)などに関するルールが定められます。使用者が労働者に対して時間外労働を指示する際には、36協定のルールを順守しなければなりません

2、工場労働者に対する残業の指示が違法となるケース

工場労働者が毎日残業をしている場合、労働基準法違反や契約違反の状態が生じている可能性があります。

工場労働者の毎日の残業が違法となる具体的なケースを4つ紹介します。

  1. (1)36協定が締結されていない場合

    工場労働者に時間外労働をさせるには、36協定を締結しなければなりません。36協定が締結されていないにもかかわらず、工場労働者が時間外労働をさせられている場合は、労働基準法違反に当たります。

  2. (2)時間外労働が36協定の上限を超えている場合

    36協定では、時間外労働の上限時間を定めることが義務付けられています。36協定で定められた上限を超えて、工場労働者が時間外労働をさせられている場合は、労働基準法違反に当たります。

  3. (3)明らかに不必要な業務を指示した場合

    使用者が工場労働者に対して時間外労働を指示できるのは、業務上合理的に必要な範囲内に限られます。

    したがって、仕事内容が明らかに不必要であるにもかかわらず、使用者が工場労働者に対して時間外労働を指示することは、指揮命令権の逸脱・濫用に当たり違法となります。

  4. (4)労働契約において「残業なし」の旨が明記されている場合

    労働契約において残業がない旨が明記されている工場労働者に対しては、使用者は残業を指示することができません。

    このような工場労働者に対して、使用者が勤務時間終了後の作業を指示することは、指揮命令権の逸脱に当たり違法です。

  5. (5)残業代が適切に支払われていない場合

    工場労働者が残業をした場合、使用者は労働基準法に定められた割合以上の割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。

    時間外労働に対しては、下表の割合の割増賃金を支払う必要があります(労働基準法第37条1項)。

    <時間外労働の割増賃金>

    月60時間以内の部分 通常の賃金に対して25%以上
    月60時間を超える部分 通常の賃金に対して50%以上

    ※午後10時から午前5時までに行われた労働(=深夜労働)については、通常の賃金に対して25%以上の深夜手当が加算されます(労働基準法第37条4項)。

    工場労働者が行った残業に対して、残業代が適切に支払われていない場合は労働基準法違反に当たります。

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3、工場労働者が不本意な残業を指示された場合の対処法

工場労働者が不本意な残業を指示されたり、違法な残業を強要されたりした場合は、以下の方法で対処しましょう。

  1. (1)残業の軽減・部署異動などについて会社と交渉する

    残業が多すぎて心身がつらい状態にある場合は、残業の軽減や部署異動などについて会社と交渉しましょう。

    会社の業務の無駄な点や、勤務形態の不適切な点などを指摘すれば、会社側が改善に動く可能性があります。また、自分に重い業務負担がかかっていることを訴えれば、他の従業員との間で業務の分担を見直してもらえるかもしれません。

    部署異動の交渉をする際には、残業が大変すぎることに加えて、他の部署の方が自分に向いていると考える理由を伝えることで、異動を認めてもらえる可能性が高まります。

    上司に希望を聞いてもらえないときは、人事担当者などにも相談してみましょう。

  2. (2)残業指示が違法でないかどうかを確認する

    前述のとおり、工場労働者に対する残業の指示は、労働基準法違反や契約違反に当たるケースがあります。

    労働基準法違反や契約違反に当たる残業を指示された場合、工場労働者はそれを拒否できます。労働基準法・36協定・労働契約などの内容を確認して、ご自身が指示されている残業が違法でないかどうかをチェックしましょう。

  3. (3)労働基準監督署に相談する

    使用者の残業指示が労働基準法違反に当たると思われる場合は、労働基準監督署に相談しましょう。

    労働者は、使用者の労働者基準法違反を労働基準監督署に対して申告することができます(労働基準法第104条第1項)。

    労働基準監督署に対する申告を行ったことを理由に、使用者が労働者に対して解雇その他の不利益な取り扱いをすることはできません(同条第2項)。

    労働者の申告を受けた労働基準監督署は、事業場へ労働基準監督官を派遣し、臨検(立ち入り調査)を実施することがあります。

    臨検を通じて労働基準法違反の事実が判明した場合、労働基準監督官は事業場に対して是正勧告を行います。是正勧告に従わない場合は刑事訴追される可能性が高いので、使用者は是正勧告に従い、労働基準法違反の状態を是正することになるでしょう。

    ただし、労働基準監督署はあくまでも行政官庁であって、労働者の代理人ではありません。未払い残業代を使用者に対して請求するなど、労働者個人としての請求を代わりに行ってもらえるわけではない点に注意が必要です。

  4. (4)弁護士に相談する

    会社に対して労働基準法違反・契約違反に当たる残業の是正を速やかに求めたいときは、労働問題の実績がある弁護士に依頼するのがおすすめです。

    弁護士は労働者の代理人として、違法残業の是正や未払い残業代の回収に関する対応を行います。弁護士のサポートを受けることが、違法残業問題のスムーズかつ適切な解決につながります

4、会社との労働トラブルについて弁護士に相談するメリット

工場労働者の方が、残業に関して会社とトラブルになったときは、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することには、主に以下のメリットがあります

  • 未払い残業代を全額回収するためのアドバイスを受けられる
  • 毎日の残業に違法性がないかどうか、法的な観点からチェックしてもらえる
  • 違法残業の是正について、会社との交渉を代理してもらえる
  • 未払い残業代の請求について、交渉や法的手続きの対応を代理してもらえる


また、残業の問題だけでなく、休憩・休日・有給休暇などに関する問題についても、弁護士にご相談いただければ解決をサポートいたします。

変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制など、特殊な労働時間制で働く方のサポートにもご対応可能です。

会社との労働トラブルを抱えている工場労働者の方は、お早めに弁護士へご相談ください。

5、まとめ

工場労働者が残業を強いられている場合、使用者(会社)の労働基準法違反を疑いましょう。

労働基準法違反の残業を指示された場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。弁護士へ相談すれば、未払い残業代請求などの対応も一任できます。適正額の残業代を回収できる可能性が高まり、労力や精神的負担も大幅に軽減されます。

ベリーベスト法律事務所は、会社とのトラブルに関する労働者のご相談を随時受け付けております。労働問題に関する経験を豊富に有する弁護士が、解決の実現に向けてサポートいたします。

工場労働者の方で、毎日の残業で心身ともに疲弊している方や、会社に対して未払い残業代を請求したい方は、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています