休日に仕事の電話がきた。違法ではない? 無視したらどうなる?

2024年09月09日
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休日に仕事の電話がきた。違法ではない? 無視したらどうなる?

令和4年度に山梨県内の労働基準監督署が監督指導を行った447事業場のうち、違法な時間外労働があったものは206事業場でした。

休日に仕事の電話やメールを受けてきても、労働者には原則として応答義務がありません。応答を義務付ける場合は時間外労働または休日労働にあたり、休日手当などの支払い義務が発生します。

本記事では、休日にかかってきた仕事の電話に対応する必要があるのかどうか、および休日手当が適切に支払われない場合の対処法などを、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。

出典:「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」(山梨労働局)


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1、休日に会社から仕事の電話……これって違法?

休日に会社から仕事の電話がかかってきて、「休みなのに応対したくない」「社用携帯電話の電源を切ってしまいたい」などと感じている方もいらっしゃるかと思います。

従業員に対して休日に仕事の電話をかけることは、違法とまでは言えないケースが多いですが、応答を義務付ける場合には違法と判断される場合があります。

  1. (1)応答義務がない場合は、違法とまでは言えない

    従業員に対して休日に仕事の電話をかけたとしても、応答が義務付けられていない場合は、それが違法とまでは言えません。
    従業員は会社の指揮命令下に置かれておらず、休日を過ごすことができているからです。

  2. (2)応答を義務付ける場合は、労働扱いになる|36協定の内容次第

    これに対して、従業員に仕事の電話への休日対応を義務付けている場合は、その日はもはや休日ではなく、業務を行う労働日と評価すべきです。この場合、電話対応が義務付けられた休日は、時間外労働または休日労働に当たると考えられます。

    時間外労働と休日労働は、労使協定(36協定)で定められたルールの範囲内に限り認められます。
    したがって、仕事の電話への休日対応を義務付けることが違法かどうかは36協定の内容次第ですが、実際には違法となるケースが大半であると考えられます

    なお、電話対応の義務付けによって休日に労働時間が発生する場合、その労働時間に対して適切な賃金(残業代)が支払われていなければ違法です。

2、休日に仕事の電話がかかってきたら、無視してもいい?

休日に社用携帯へ仕事の電話がかかってきたら、法律上は無視しても構いません。しかし、仕事の状況や職場の人間関係などを考慮して、対応を考えるべきでしょう。

  1. (1)法律上は、休日の電話は無視して構わない

    休日の電話対応を表立って義務付けている会社は、ほとんどないでしょう。
    仮に休日の電話対応を義務付けているとしても、36協定や残業代との関係で、労働基準法上違法である可能性が高いです。

    したがって法律上は、休日にかかってきた仕事の電話は無視できると考えられます。

  2. (2)仕事の状況・職場の人間関係などを考慮して対応を検討すべき

    しかしながら、重要な仕事が立て込んでいる場合や、職場の人間関係を良好に保ちたいなどの理由から、休日にかかってきた仕事の電話にもある程度対応した方がよいケースもあります。

    実際の仕事の状況や、職場での人間関係の状況などを考慮した上で、休日の電話に対応するかどうかをケースバイケースで判断するのがスマートでしょう。

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3、休日に仕事の電話がかかってきたときの対処法

休日に仕事の電話がかかってきた場合の対応としては、以下のパターンが考えられます。



  1. (1)無視する

    前述のとおり、休日の仕事の電話に対応する義務はないと考えられるので、法律上は無視しても構いません。重要な仕事が立て込んでいるなどの事情が特になければ、基本的には無視してよいでしょう。

    休日の電話を無視したことを理由に、減給や解雇などの懲戒処分を行うことはできません。もし会社から不当な扱いを受けたら、弁護士に相談して撤回を求めましょう。

  2. (2)最低限の対応をする

    休日の電話に対応する義務はないとしても、仕事を円滑に進めるため、あるいは同僚に配慮するため、便宜上何らかの対応をすることは考えられます
    その場合は、休日なので心身を休めることを優先しつつ、状況に応じて最低限の対応を行いましょう。

  3. (3)労働時間扱いとするよう会社と交渉する

    休日に仕事の連絡を受けたことをきっかけに、かなりの時間を対応にとられる場合には、対応時間を労働時間扱いとするよう会社と交渉しましょう。

    休日に仕事の電話がかけられていることを会社が黙認していた場合は、法律上の労働時間に当たる可能性が高いです。弁護士のサポートを受けながら、法的根拠に基づいて労働者側の言い分を伝えましょう

4、休日の残業代が適切に支払われない場合の対処法

休日の残業代が適切に支払われない場合は、以下の流れで対処しましょう。



  1. (1)弁護士に相談する

    残業代の未払いは労働基準法違反であり、会社に対して未払い額の支払いを請求できます。

    ただし、適正額の未払い残業代を請求・獲得するためには、法的な観点からの検討が必要不可欠です。まずは弁護士に相談して、未払い残業代請求の準備を進めましょう。

  2. (2)労働時間の証拠を確保する

    未払い残業代請求に備えて、労働時間に関する客観的な証拠を確保しましょう。

    以下のような資料は客観性が高く、有力な証拠であると評価される可能性が高いです

    • タイムカードや勤怠管理システムの記録
    • オフィスの入退館記録
    • 交通系ICカードの乗車記録
    • 会社のシステムへのアクセス記録
    • タクシーの領収書
    など
  3. (3)未払い残業代を計算する

    証拠資料に基づいて労働時間(残業時間)を集計できたら、会社に対して請求する未払い残業代の金額を計算しましょう。

    残業代の金額は、以下の式によって計算します。

    残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間数

    1時間当たりの基礎賃金=1か月の総賃金(以下の手当を除く)÷月平均所定労働時間

    <総賃金から除外される手当>
    • 時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当
    • 家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
    • 通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

    月平均所定労働時間=年間所定労働時間÷12か月


    割増率は、残業(休日労働・深夜労働を含む)の種類に応じて以下のとおりです。

    残業の種類 概要 割増率
    法定内残業 所定労働時間を超え、法定労働時間を超えない残業 割増なし
    時間外労働 法定労働時間を超える残業 通常の賃金に対して25%以上 ※月60時間を超える部分については、通常の賃金に対して50%以上
    休日労働 法定休日における労働 通常の賃金に対して35%以上
    深夜労働 午後10時から午前5時までに行われる労働 通常の賃金に対して25%以上


    休日の電話対応等については、法定外休日の場合は法定内残業または時間外労働(+深夜労働)、法定休日の場合は休日労働(+深夜労働)に該当する可能性があります。

    弁護士のサポートを受け、労働時間を正しく区分した上で未払い残業代の額を計算しましょう。

  4. (4)会社に対して未払い残業代を請求する

    証拠の確保や金額の計算などの準備が済んだら、実際に会社に対して未払い残業代を請求します。

    未払い残業代請求の主な方法(手続き)は、以下のとおりです。

    1. ① 交渉:会社と直接話し合い、未払い残業代の精算に関する合意を目指します。

    2. ② 労働審判:地方裁判所において、労働審判委員会(=裁判官1名+労働審判員2名)の仲介により、調停(合意)による解決を目指します。調停が成立しない場合は、労働審判委員会が審判を行って結論を示します。

    3. ③ 訴訟:裁判所に対して、会社に未払い残業代の支払いを命ずる判決を求めます。


    交渉・労働審判・訴訟のいずれについても、適切に対応するためには弁護士のサポートが不可欠です。未払い残業代請求をご検討中の方は、お早めに弁護士へご相談ください。

5、まとめ

休日に仕事の電話がかかってきても、法律上は応答する義務がありません。仕事の状況や職場における人間関係に配慮しつつ、必要に応じて最低限の対応をすればよいでしょう。

休日の電話対応が義務付けられている場合は、未払い残業代が発生している可能性が高いです。弁護士に相談して、会社に対して未払い額の支払いを請求しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、残業代請求に関する労働者のご相談を随時受け付けております。労働問題を専門的に取り扱う弁護士が、適正額の残業代回収を目指して尽力いたします。
休日の電話対応や残業代の未払いなどについてお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています