解雇理由証明書は何に使う? 請求方法や注意点を弁護士が解説

2025年02月18日
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解雇理由証明書は何に使う? 請求方法や注意点を弁護士が解説

山梨労働局の総合労働相談センターが、令和4年に受け付けた相談件数の合計は1614件で、そのうち「解雇・雇止め」に関する相談が208件と全体の13%を占めています。

従業員が会社を解雇される理由は、能力不足や非違行為などさまざまです。従業員が解雇された理由を知る方法のひとつに、解雇理由証明書の交付があります。この解雇理由証明書とはどのようなもので、どのように請求すればよいのでしょうか。

このコラムでは、上記のような疑問点について、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。


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1、解雇理由証明書とは

解雇理由証明書とはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、解雇理由証明書の意義や使い道、解雇通知書・退職証明書との違いについて解説します。

  1. (1)解雇理由証明書とは

    解雇理由証明書とは、会社が従業員を解雇した場合に、解雇の理由を証明するために交付される書類です

    従業員が解雇予告をされた日から退職日までの間において、解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は遅滞なくこの証明書を交付する義務があります(労働基準法第22条2項)。

    このように解雇理由証明書の交付が求められている趣旨は、それによって解雇をめぐるトラブルを未然に防止することにあります。そのため、解雇の理由を具体的に示す必要があります。
    具体的には、就業規則の一定の条項にあたることを理由に解雇した場合には、就業規則の内容や、その事実関係を記載する必要があります。

    もっとも、解雇の予告の後に、その従業員がその解雇以外の理由で退職した場合には、会社は、その退職の日以後、解雇理由証明書を交付する必要はありません(同条項但書)。また、解雇理由証明書は、会社が主張する解雇理由を明らかにするものにすぎないため、従業員がこの証明書を請求して受領したとしても、それで解雇を認めたことにはなりません。

  2. (2)解雇通知書・退職証明書との違い

    解雇理由証明書と類似したものとして、「退職証明書」があります(労働基準法第22条第1項)。

    解雇理由証明書が解雇予告の時から退職日までの間に請求されるものであるのに対して、退職証明書は退職日以降に請求されることになります。退職証明書は、解雇の場合に限らず、従業員が退職した場合に請求できる証明書で、以下のような内容が記載されます。

    • 書類名
    • 証明年月日
    • 退職した従業員名
    • 証明内容
    • 退職した従業員が希望した記載事項(勤務期間、業務の種類や内容、その事業における地位、賃金、退職の事由など)


    また、「解雇通知書」も解雇理由証明書とは異なります。
    解雇通知書とは、事業者が従業員に対して解雇の意思表示のために交付する書面のことです
    解雇の意思表示は口頭でも行うことができ、解雇通知書は解雇理由証明書とは違い、発行が義務づけられている書面ではありません。
    解雇通知書は事業者の判断で作成する書面であるのに対し、解雇理由証明書は従業員から請求された際に作成する書面であるという違いがあります。

2、会社に解雇理由証明書を請求する方法

解雇理由証明書は、解雇された従業員が期間内に請求した場合に発行が義務づけられているものです。しかし、その請求方法については、特に法的な制限はありません。

会社の担当者や人事部に口頭や書面で請求するだけでも、証明書を出してもらえる可能性があります。
会社が従業員からの請求に応じない場合には、解雇理由証明書の交付は会社の法律上の義務であることを伝えましょう。会社には遅滞なく解雇理由証明書を交付する義務があるため、すぐに交付してもらえない場合には、違法となる可能性があります。

口頭や書面によって請求しても会社が発行を拒否したり、交付に時間がかかりすぎたりする場合には、内容証明郵便によって請求すべきでしょう

内容証明郵便は一般書留郵便物の内容文書について証明してもらえるサービスです。
「いつ」「どのような内容」の文書を「誰から」「誰に宛てて」差し出されたのかということを、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明してくれます。
そのため、内容証明郵便を利用することで、解雇証明書を「請求したこと」の客観的な記録を残し、会社が従業員の請求に応じなかったという証拠を残すことができます。

3、解雇理由証明書を請求する際の注意点

ここでは、解雇理由証明書を会社に請求する際の注意点を解説します。

  1. (1)請求できる期限(2年)に注意する

    労働基準法には、「この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から2年間行わない場合においては、時効によって消滅する」と規定されています(労働基準法第115条)。

    つまり、従業員が解雇されてから2年が経過すると、解雇理由証明書を請求することができなくなります

  2. (2)記載内容に虚偽がないか確認する

    解雇理由証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはいけません(労働基準法第22条3項)。たとえば、労働者が解雇の事実のみを請求した場合には、解雇理由を証明書に記入してはいけません。
    また、証明書に秘密の記号を記入することもできません(同4項)。

    また、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当性であると認められない場合は、会社は解雇権を濫用したものとして無効となります(労働契約法第16条)。
    そのため、解雇理由証明書には、解雇を基礎づける事情を網羅して記載する必要があり、解雇理由証明書記載の事情が、書面や従業員の証言などから客観的に裏付けられており、解雇の理由となる合理的なものであるといえる必要があります。

    解雇理由証明書に記載された事実に虚偽や誤りがないかを確認することは非常に重要となります。事実誤認や事実に対する評価が不適切な場合には、解雇の無効を主張できる可能性があるからです。

    さらに、就業規則などの何条に基づいて、解雇を行ったかを記載する必要があります。
    当初、解雇理由証明書に記載されていなかった解雇理由を事後的に追加できるか否かは問題となります。懲戒解雇については、懲戒当時に会社が認識していなかったものについては当該懲戒解雇の理由とされたものではないため、事後的に追加することは許されないとされています。

  3. (3)不安な場合には弁護士に相談する

    会社から解雇されたものの、会社が解雇理由証明書を交付してくれない場合には、弁護士に相談するようにしてください。
    また、解雇理由の証明書は交付されたものの、会社から解雇されたことに納得できない場合にも弁護士に相談するようにしてください。

    弁護士に相談するメリットについては、次章で詳しく解説します。

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4、労働問題を弁護士に相談するメリット

ここでは、労働問題を弁護士に相談することのメリットについて解説します。

  1. (1)会社側との交渉を代行してもらえる

    労働問題を弁護士に相談することで、会社との交渉を代わりに行ってくれます。
    解雇理由証明書の交付を請求したり、交付された証明書に基づき解雇の有効性を争ったりする場合であっても、必要な手続きはすべて弁護士が代理で進めてくれます。

    会社に対して従業員個人で交渉しようとしても、対等に向き合ってくれず不利な条件が提示されることもあります。この点も、法律の専門家である弁護士に任せておくことで依頼者の望む方向で話し合いを進められる可能性があります

  2. (2)不当解雇である場合の対応についてアドバイスを受けられる

    不当解雇である場合には、その対応について適切なアドバイスを受けることができます。

    解雇は無効であるとして、解雇期間中の賃金の支払いを請求したり、会社に対して雇用契約に基づく従業員たる地位にあることの確認訴訟を提起したりといった選択肢の中から、適切なものを選んでもらうこともできます。

  3. (3)労働審判などの複雑な手続きを任せられる

    手続きの流れは、まずは会社と交渉をし、うまく交渉がまとまらなければ、労働審判や訴訟などの法的手続きを申し立てることになります。

    労働審判は、原則3回の審判手続きで話し合いによる解決を目指すものです。
    解雇の無効を主張して、地位確認請求や未払賃金の支払いなどを求めていきます。

    労働審判でも解決しない場合には、訴訟を提起していくことになります。訴訟でも労働審判同様、地位確認・未払賃金・慰謝料請求などを行います。

    弁護士に依頼しておけば、これらの裁判対応や必要書面の作成・提出などについても、すべて任せておくことができます

5、まとめ

解雇理由証明書には、会社が従業員を解雇する理由が記載されており、解雇理由を正確に把握したり、不当解雇として争う場合の証拠としたりするなどの用途があります。

解雇理由証明書に記載されている内容に虚偽・誤りがある場合や、明らかに解雇が不当であると思われる場合には、すぐに弁護士に相談するようにしてください。

ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスには、労働問題の解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています