正社員がクビになった場合の対処法を弁護士が解説
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山梨労働局によると、令和4年度の「民事上の個別労働紛争の相談内容」の合計は1614件で、そのうち“解雇・雇止め”は208件でした。
一般に「クビ」は解雇を指しますが、会社の上司から突然クビを告げられた場合、どうすればいいのでしょうか。
このコラムでは、正社員のクビ(=解雇)の概要、解雇が違法となる場合、クビを受け入れたくない場合の3つの対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。
目次
1、正社員におけるクビ(解雇)とは?
正社員に対する「クビ」とは、法律的には「解雇」を指します。解雇とは、労働者の合意に基づかずに、会社からの一方的な意思表示によって終了することをいいます。
解雇には、「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3種類があります。それぞれの解雇の違いや特徴について、詳しく説明します。
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(1)普通解雇とは?
「普通解雇」とは、従業員の事情を理由に行われる解雇のことを指します。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。- 従業員の労働能力の欠如
- 適性の欠如
- 勤務成績の不良
- 規律違反
- 義務違反行為
解雇の理由については、就業規則などで解雇事由を明記している企業がほとんどです。就業規則を確認しても「解雇の根拠がない」「事実に誤りがある」といった場合は、解雇権の濫用として無効となる可能性があります。
労働者を保護するため、普通解雇には、さまざまな条件が設けられています。違法となる解雇については2章で詳しく解説します。 -
(2)整理解雇とは?
「整理解雇(リストラ)」とは、業績悪化や経営不振など会社側の都合によって人員整理が必要となった場合に行われる解雇のことを指します。
整理解雇が有効か否かは、以下の4つを考慮する必要があります。- ① 人員整理の必要性:深刻な経営不振でリストラを避けられない状況であること
- ② 解雇回避努力義務の履行:役員報酬のカット、希望退職者の募集、配転、経費削減など解雇回避に手を尽くしたこと
- ③ 人選の合理性:会社の存続にとって必須のスキルを有していないなど、解雇対象者の人選が合理的であること
- ④ 手続の適切性:労働者への説明や協議が十分に行われたこと
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(3)懲戒解雇とは?
「懲戒解雇」とは、懲戒処分としての解雇のことです。懲戒処分とは、従業員が会社の規則違反をした際の制裁罰のことを指します。
この場合の規則違反とは、上司の指示命令に従わない、無断欠席を繰り返す、職場の風紀を乱す行動をする、会社の名誉を毀損する行為をする、などです。
従業員がこのような行為をした場合、会社は制裁として懲戒処分を課すことになります。
懲戒処分の種類としては、「戒告」「けん責」「減給」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇(諭旨退職)」「懲戒解雇」などがあります。懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重い処分です。
2、正社員を急にクビにすることは違法? 無効となるケース
会社は自由に労働者を解雇できるわけではありません。法令に違反して行われた解雇は違法・無効となります。
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(1)解雇には2つの要件が必要
労働契約法には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されています(労働契約法第16条)。
したがって、
① 客観的に合理的な理由があること
② 社会通念上相当であること
という条件を満たさない限り、解雇は無効となるのです。
以下のような理由で解雇された場合であっても、解雇権を濫用しているといえる場合には、そのような解雇は無効となります。 -
(2)「普通解雇」が無効となるケース
客観的合理性や社会通念上相当でない場合、1章の「普通解雇とは?」で挙げた理由を満たしていても、解雇が無効となるケースがあります。
たとえば「能力不足」や「適性の欠如」「勤務成績の不良」などがあっても、指導不足や配置転換によるチャンスを与えなかった場合、無効となる可能性があります。
また就業規則違反など「会社の規律違反」や「義務違反行為」があっても、それが軽微なミスであったり繰り返しの行為でなかったりした場合、客観的合理性がなく、無効となり得ます。 -
(3)「差別的な解雇」が無効となるケース
妊娠・出産、介護、性別、年齢を理由とする解雇は、労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などにおいて厳しく規制されています。これらの理由による解雇は違法であり、無効となります。
また、病気や怪我を理由として解雇された場合であっても、解雇が無効となる可能性があります。
たとえば、就業規則に規定された休職期間で復職できる状態ではなかった、時短勤務や業務負担の軽減によっても復職できる可能性がなかったなどの事情がない場合には、解雇権の濫用となる可能性があります。
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3、正社員がクビにされたらすべきこと
正社員がクビを宣告された場合、まず何をすればいいのでしょうか。以下では、正社員がクビを告げられたときに対処すべき事項をお伝えします。
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(1)解雇予告通知書を確認する
会社が従業員を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に解雇予告通知をするか、30日分以上の平均賃金の支払いをしなければなりません(労働基準法第20条)。
会社からクビを宣告されても解雇日までに日数がある場合には、この解雇予告通知書を確認してください。解雇予告通知書がない場合や、通知書を見ても解雇の理由が分からないという場合には、会社に解雇理由証明書を請求しましょう(労働基準法第22条)。
解雇に対処するためには、まずは解雇された理由を確認することが重要です。 -
(2)年金と健康保険を切り替える手続きをする
解雇を受け入れて退職する場合には、年金・健康保険の切り替え手続きを済ませる必要があります。
健康保険の切り替えについては、以下の3つの手続きから選択することになります。- 任意継続被保険者制度を利用する(退職後20日以内に手続きが必要)
- 国民健康保険に加入する
- 家族の扶養に入る
年金については、以下の2つの手続きから選択することになります。
- 国民年金に加入する
- 配偶者の扶養に入る(国民年金第3号被保険者となる)
無職になる場合や自営業者等になった場合には、国民年金第1号被保険者の手続きを行い、年金保険料を納めます。
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(3)退職金や失業保険など受け取れるお金を確認する
従業員が会社を退職する際には、退職金や雇用保険の失業手当を受け取れるかどうかを確認する必要があります。
退職金については、勤務先の制度や解雇理由によって受け取れない可能性がありますが、失業保険については受け取れる可能性が高いでしょう。
また、不当解雇の場合には、解雇後の賃金や慰謝料を請求できる可能性もあるため、労働事件に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
4、クビを受け入れたくない場合の対処法
クビを受け入れたくない場合には、どのような対処方法があるのでしょうか。
以下では、クビを受け入れない場合に正社員がとるべき行動について解説していきます。
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(1)退職届に署名押印しない
クビを受け入れない場合、退職届を提出してはいけません。
退職届に署名押印をして提出してしまうと、事後的にその無効を主張することが難しくなります。さらに、失業手当の給付において不利益を受ける可能性があります。
署名押印を拒否するだけでなく、上司とのやり取りを記録に残すことも重要です。メールや書面にするなどして、証拠として残せる形にしておきましょう。 -
(2)解雇予告手当や退職金を受け取るときの注意点
解雇予告手当や退職金を受け取る行為は、解雇に納得しているとも受け取られかねない行為です。
解雇予告手当や退職金の受領自体が必ずしも解雇を承認したことにはなりませんが、受け取る際には「受領はしたが解雇に同意はしていない」との意思表示をメールなどでしっかり残すように注意しましょう。 -
(3)弁護士に相談する
「解雇に疑問がある」「クビを受け入れたくない」といった場合は弁護士に相談することをおすすめします。
労働問題の解決実績がある弁護士に相談すれば、解雇の無効を争えるかどうか、会社に対してどのような請求ができるのか、具体的なアドバイスを受けられます。
会社に復職を求めたり、損害賠償請求をしたりする場合にも、交渉や法的な手続きなど、すべて弁護士に任せることができます。
5、まとめ
会社は従業員を解雇することができますが、正当な理由がなければ解雇は無効となります。
そして、クビに納得できない場合には、退職届を提出したり、安易に解雇予告手当や退職金を受け取ったりしてはいけません。
正社員が急にクビにされた場合には、不当解雇に該当する可能性もあるため、まずは労働問題の実績のある弁護士に相談することをおすすめします。会社に復職を求めたり、慰謝料を請求したりできる可能性もあります。
ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスには、労働トラブルの解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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