突然の解雇が違法である理由は? 違法とならないケースや対処法を紹介

2024年05月27日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 突然の解雇
  • 違法
突然の解雇が違法である理由は? 違法とならないケースや対処法を紹介

会社から「明日から来なくてよい」と突然、解雇を言い渡された場合、どうすればいいのでしょうか。また、そのような突然の解雇は違法ではないのでしょうか。

本コラムでは、突然の解雇が違法となる場合・違法とならない場合や、突然解雇された場合に従業員がとるべき対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、突然の解雇は違法?

そもそも突然の解雇は違法となるのでしょうか。違法もしくは無効となる解雇について解説します。

  1. (1)解雇予告がない

    「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない」として(労働基準法第20条1項)、原則として解雇するためにはその予告が必要となります

    この解雇予告に違反した解雇については、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、解雇通知後30日が経過したときか、解雇予告手当の支払いをしたときに解雇の効力が発生することになります。

  2. (2)整理解雇の4要素を満たさない

    労働契約法第16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されています。

    特に業績の悪化や経営不振など会社の都合で行われる人員整理(整理解雇)の場合には、解雇はできるだけ避け、最後の手段とされなければなりません。

    整理解雇の有効性を判断するためには、以下の4つの要素を総合的に考慮する必要があります

    1. ① 人員削減の必要性
    2. ② 解雇回避努力義務の履行
    3. ③ 人選の合理性
    4. ④ 手続きの相当性


    そのため、会社はすぐに整理解雇をするのではなく、残業削減、配転・出向、パートタイマーの雇止め、新卒採用中止、一時休業、希望退職募集など、解雇以外の手段で解雇を回避するように努めていない場合には、解雇が違法となる可能性があります。

  3. (3)懲戒解雇の手続保障がない

    懲戒処分として解雇が行われる場合もあります。
    懲戒解雇とは、使用者が従業員の企業秩序違反行為等に対して課す制裁罰としての解雇です。

    労働契約法第15条には、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする」と規定されています。

    そのため、懲戒処分が有効といえるためには、就業規則等に懲戒処分の根拠規定が定められている必要があります。また、懲戒事由該当性があったとしても、行為に比べてあまりに重い処分の場合には権限濫用として無効となります。

    さらに懲戒処分は制裁罰としての性格を持ち刑事処罰と類似性を持つため、以下のような罪刑法定主義類似の要請を満たす必要があります

    • 懲戒の種別・事由の明定
    • 以前の事案に遡及して適用してはならない(不遡及の原則)
    • 同じ事由について繰り返し処分をしてはならない(一事不再理の原則)
    • 適正な手続きを踏むこと


    したがって、従業員に対して懲戒事由を告知して弁明の機会を与えない場合には、適正手続きを欠いた懲戒解雇であるとして、公序良俗(民法第90条)に反し無効となります。

2、突然の解雇でも違法とならないケース

突然の解雇であっても以下のような場合には、違法とならない場合もあります。

  1. (1)すでに解雇予告手当が支払われているケース

    解雇する場合には、30日前に解雇予告をすることが必要でした(労基法第20条1項)。

    しかし、「30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と規定されています。
    これを解雇予告手当といいます。
    会社は、平均賃金を支払った日数分だけ予告の日数を短縮することができます(同条2項)。

    したがって、予告なしの解雇の場合には、会社は平均賃金の30日分を従業員に対して支払わなければなりません。

  2. (2)事業継続が不可能となったケース

    「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」には、解雇予告も解雇予告手当もなしに即時解雇することができます(労基法第20条1項但書)。
    「やむを得ない事由」となるのは、以下のような場合です

    • 過失によらない火災により事業場が焼失した場合
    • 震災に伴う工場・事業場の倒壊
    など


    ただし、そのような事由については行政官庁の認定が必要となります(同条3項)。

  3. (3)労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇するケース

    「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」についても、予告も解雇予告手当もなしに即時解雇することができます(労基法第20条1項但書)。

    そのような事由があるといえるのは、労働者が行った悪質な非違行為のため、その雇用を継続することが企業経営上の支障となるような場合です。また、懲戒解雇であれば常に解雇予告も予告手当も不要となるわけでもありません。

3、突然解雇された場合の対処法

では、会社から突然解雇を言い渡された場合、具体的にどうすればよいのでしょうか。解雇を言い渡された後の対処方法について解説します。

  1. (1)解雇理由証明書の交付を求める

    会社から突然解雇を言い渡された場合には、まずは解雇通知書、解雇理由証明書の交付を求めて、解雇の理由を確認しましょう。

    使用者は、退職する労働者が請求した場合には、解雇の理由についての証明書を遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法第22条第1項)。

    就業規則に該当することを理由とする解雇であれば、その条項の内容とそれに該当するに至った事実関係などが明示される必要があります。

    なお、解雇理由証明書は、使用者側の主張する解雇理由を明らかにするものにすぎません。そのため、労働者がこの証明書を請求して受領したとしても、それで解雇を認めたことにはなりません

  2. (2)解雇予告手当などの支払いを求める

    解雇の理由を確認した結果、違法・無効となる可能性がある場合には、会社に対して従業員たる地位の確認を求めたり、民法第536条2項に基づいて解雇日以降の賃金を請求したりすることもできます。

    即日解雇を受け入れる場合には、会社に解雇予告手当の支払いを求めることができます。
    解雇予告手当は、労働基準法第12条の規定に基づき計算します。

    ただし、解雇の有効性について会社と争う場合には、解雇予告手当を受け取ることは矛盾行為となるため、この場合には解雇予告手当を請求することはできません。解雇予告手当を受け取ってしまうと解雇を認めたとみなされてしまうおそれがあります

  3. (3)解雇の違法性を検討し、会社と交渉する

    会社から交付された解雇理由書を確認して、解雇の違法性を検討しましょう。
    解雇が就業規則等の解雇事由に該当してない場合や、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、解雇は違法・無効となることになります。

    会社に対して、解雇の有効性を争うことを伝えて交渉することになります。
    会社から、解雇に関する合意書や承諾書への署名・押印を求められても応じてはいけませんまた退職届を提出するように求められても応じてはいけません

    即日解雇の有効性を争う場合には、解雇日以降についても会社で働く意思があることを通知して、業務の指示するように求めることが重要です。解雇が違法な場合には、あくまで会社の落ち度によって本人が労務を提供できない状態となっているのです。

4、会社に突然解雇された場合は弁護士に相談を

会社から突然解雇を言い渡された場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。こちらでは、弁護士に依頼した場合のメリットについて解説します。

  1. (1)代理人として会社と交渉してもらえる

    即日解雇を言い渡された従業員が会社と直接交渉することは、肉体的にも精神的にも負担が大きいと言えるでしょう。従業員は1人の私人として会社という巨大な組織と対峙しなければなりません。
    従業員個人の交渉力や知識量は、会社と比較して圧倒的に不利です

    そのため、労働事件に詳しい弁護士に依頼することで、会社と対等な立場で話し合いや交渉を行うことができます。

  2. (2)解雇に違法性がないか法的に判断してもらえる

    突然の解雇に違法性があるのかないのかという判断は、専門的な法律の知識が必要となる可能性があります。

    上記で解説したように、例外的に即日解雇が有効とされる場合も存在しています。
    弁護士に相談することで、ご自身のケースで突然の解雇が違法なのか、解雇が違法の場合には会社にどのような請求ができるのかなどについて、適切なアドバイスを受けることができるでしょう。

  3. (3)労働審判や訴訟の手続きを任せられる

    会社との話し合いでは紛争が解決しない場合には、労働審判や訴訟といった裁判所の手続きを利用することになります。
    労働審判は、原則3回の審判手続きで話し合いによる解決を目指すものです。
    解雇の無効を主張して、地位確認請求や未払い賃金の支払いなどを求めていきます。

    労働審判でも解決しない場合等には、訴訟を提起していくことになります。訴訟では地位確認・未払い賃金・慰謝料請求などを行います。

    弁護士に依頼しておけば、これらの裁判対応や必要書面の作成・提出などについても、すべて任せておくことができます

5、まとめ

以上、突然の解雇は違法・無効となる可能性があるため、しっかりと解雇理由を確認して、適正に対処していくことが重要となります。

ただし、即日解雇であっても例外的に有効であるケースもありますので、判断に迷う場合には、すぐに弁護士に相談してください。

また、会社と争う場合には、弁護士に事件を依頼して対応してもらうことで、納得いく解決ができる可能性が高まります。
ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスには、労働トラブルの解決実績の豊富な弁護士が在籍しておりますので、ぜひご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています