個人再生後にローンを組むことは可能? いつから利用できる?
- 個人再生
- 個人再生後のローン
裁判所が公表している司法統計によると、令和3年に甲府地方裁判所に申し立てのあった個人再生事件(小規模個人再生、給与所得者等再生)の件数は、60件でした。
個人再生の手続きを利用することによって、借金の大幅な減額が可能になりますので、借金に関する悩みを解決する有効な手段となります。しかし、個人再生をした後は、一定期間、ローンを組むことができなくなりますので、そのようなデメリットも踏まえて債務整理の手段を検討していく必要があります。
今回は、個人再生後のローンの利用と個人再生の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。
1、個人再生後にローンを組むことは可能?
個人再生後にローンを組むことはできるのでしょうか。以下では、個人再生の概要と個人再生後のローンとの関係について説明します。
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(1)個人再生の概要
個人再生とは、裁判所に再生計画の認可をしてもらうことによって、借金を大幅に減額してもらうことができる債務整理の手続きです。減額後の借金については、原則3年間(最長5年間)で分割して返済をしていくことになりますので、安定した収入がある方が利用できる手続きだといえます。
個人再生の手続きには、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの手続きがあります。- 小規模個人再生
個人再生の原則的な手続きです。将来的に反復・継続して収入を得ることができる方であれば、サラリーマン以外にも自営業者や年金生活者も利用することができます。 - 給与所得者等再生
収入の変動が小さい給与所得者を対象とした小規模個人再生の特則です。給与所得者等再生では、債権者の同意が不要とされていますので、債権者の反対が予想される事案では、給与所得者等再生を利用する必要があります。
- 小規模個人再生
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(2)個人再生後いつからローンを組むことができるのか
個人再生をすると、その情報は、信用情報機関に事故情報として登録されてしまいます。信用情報機関に事故情報が登録された状態を、いわゆる「ブラックリスト」に載るといいます。
信用情報機関に掲載されている個人の信用情報については、金融機関やローン会社などが顧客からローンの申し込みがあった際の審査に利用することができます。
照会の結果、事故情報が掲載されていることがわかれば、返済能力に不安があるとみなされて、ローンの審査に通らなくなってしまいます。これが債務整理をするとローンを組むことができなくなるといわれる理由です。
ただし、事故情報は、永久に残ってしまうわけではなく、一定期間が経過すると事故情報が抹消されますので、それ以降は、ローンを組むことが可能になります。
事故情報が抹消される期間は、信用情報機関によって以下のように異なっています。- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)……完済から5年
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)……完済から5年
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)……手続開始決定日から10年
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(3)返済中のローンは個人再生でどうなるのか?
個人再生の手続きでは、すべての債権を再生手続きに含める必要がありますので、返済中のローンがあるという場合には、それも個人再生の対象となります。そのため、返済中のローンについては、すべて再生計画に従って返済をしていかなければなりません。
なお、自動車ローンを組んでおり、個人再生の申し立て時点で完済をしていない場合には、ローン会社に自動車を引き上げられてしまいますので注意が必要です。
2、個人再生のメリット・デメリットや手続きの注意点
以下では、個人再生のメリット・デメリットおよび個人再生手続きの注意点について説明します。
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(1)個人再生のメリット・デメリット
個人再生には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
① 個人再生のメリット
個人再生のメリットとしては、以下の点が挙げられます。- 借金の大幅な減額が可能
個人再生によって借金の大幅な減額が可能です。たとえば、住宅ローン以外の借金総額が500万円以上1500万円未満であれば、最大で5分の1まで減額される可能性がありますので、借金総額600万円というケースでは、120万円まで借金が減額されます。 - 財産を手放す必要がない
自己破産の場合には、一定金額以上の財産を持っている場合には、それをすべて手放さなければなりません。しかし、個人再生にはそのような制約はありませんので、財産をそのまま持ち続けながら手続きを進めることができます。
ただし、既に述べたように、自動車ローン付きの自動車等ローンの完済が終わっていない財産は、個人再生をしてしまいますと、ローン会社に引き上げられてしまいますので、ご注意ください。 - 免責不許可事由があっても利用できる
自己破産の場合には、浪費やギャンブルが理由となった借金については、免責不許可事由に該当するため、裁判官の裁量によって免責を受けようとする場合には、免責されないというリスクがあります。
しかし、個人再生には、免責不許可事由という概念はありませんので、自己破産よりも個人再生の方がリスクがありません。 - 住宅ローンのある自宅を残すことができる
住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用すれば、住宅ローンがある自宅を所有している場合であっても、自宅を手放すことなく住み続けることが可能です。ただし、この場合の住宅ローンについては、個人再生の減額対象外となります。 - 自己破産のような資格制限がない
自己破産の場合には、警備員や保険の販売員、士業等の資格が失われてしまうことになるため、そのような職業に就いていると、今後の収入を得られなくなってしまうリスクがあります。しかし、個人再生にはそのような資格制限はありませんので、そのような職業に就いている方でも資格を失う心配はありません。
② 個人再生のデメリット
個人再生のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。- 返済を継続しなければならない
個人再生は、自己破産のように借金をゼロにする効果はありませんので、減額後の借金を返済していかなければなりません。そのため、安定的な収入がある方でなければ利用することができません。 - 連帯保証人に影響が生じる
借金をした際に、連帯保証人を付けていた場合には、連帯保証人が債権者から一括弁済を求められることになります。個人再生では、任意整理のように債務整理の対象に含める債権を選ぶことができず、すべての債権を対象にしなければなりませんので連帯保証人に迷惑をかけてしまうおそれがあります。 - 信用情報機関への事故情報の登録
前述したとおり、個人再生をした場合には、その情報が信用情報機関に事故情報として登録されてしまいます。それによって、一定期間ローンを組むことができず、クレジットカードの審査も通らなくなってしまいます。 - 官報に情報が載ってしまう
自己破産と同じように、個人再生を行った場合には、官報に氏名や住所が載ってしまいます。
- 借金の大幅な減額が可能
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(2)個人再生手続きの注意点
個人再生をする場合には、以下の点に注意が必要です。
- ① 虚偽の申告をしない
個人再生による減額幅は、借金総額だけではなく、可処分所得の金額や清算価値なども踏まえて決定されます。少しでも返済する金額を少なくするために、収入を少なく申告したり、財産の一部を隠したりするなどの行為をしてしまうと、詐欺破産罪に問われるリスクがあります。 - ② 再生計画に従って返済を続ける
裁判所によって再生計画が認可された場合には、原則として3年間、再生計画に従って返済を続けていくことになります。再生計画に従って返済を終えれば、残りの借金を免除してもらうことが可能です。
他方、返済が遅れたり、返済ができなくなったりした場合には、再生計画が取り消されてしまい、減額された借金がもとに戻ってしまう可能性もありますので注意が必要です。
再生計画に従った返済が難しくなった場合には、「ハードシップ免責」や「再生計画の変更」といった手続きをとることも可能ですので、早めに弁護士に相談をして対策を講じるようにしましょう。
- ① 虚偽の申告をしない
3、個人再生後にローンを組む場合に気を付けるべきことは?
個人再生後にローンを組む場合には、以下の点に注意が必要です。
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(1)関連会社でのローン利用は控える
個人再生後であっても、信用情報機関の事故情報が期間経過によって抹消された後であれば、ローンを組むことが可能になります。
しかし、個人再生の対象となった債権者では、社内情報として債務整理をした情報を独自に保存していることがあります。いわゆる「社内ブラック」と呼ばれる状態であり、ブラックリストから消えたとしても、社内ブラックに載っている場合には、その会社および関連会社ではローンを組むことはできません。
そのため、個人再生後のローンは、個人再生の対象に含めた債権者およびその関連会社以外に申し込むようにしましょう。 -
(2)短期間で複数のローン申し込みをしない
ローン会社にローン申し込みをした情報は、信用情報機関の個人信用情報に登録されます。誰が、どの会社に、いつローン契約の申込みをしたのかという情報は、6か月間保存されますので、短期間に複数のローン申し込みをすると、マイナス要素になってしまい、審査に通りにくくなってしまう可能性があります。
4、個人再生など債務整理のご相談は弁護士へ
個人再生など債務整理のご相談は、弁護士にお任せください。
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(1)適切な債務整理の方法を提案可能
債務整理の方法には、個人再生以外にも自己破産や任意整理といった方法もあります。それぞれの債務整理の方法には、メリットだけでなくデメリットも存在しますので、ご自身の状況に応じて適切な債務整理の方法を選択することが大切です。
弁護士に相談をすれば、資産、収入、借金総額などを踏まえて、最適な債務整理の手段を提案してもらうことができます。そのため、借金の返済でお困りの方は、まずは弁護士に相談をするようにしましょう。 -
(2)債権者との対応を任せることができる
借金の返済が滞ってしまうと、債権者からの督促などで精神的にストレスを抱える方も多くいます。弁護士に依頼をすれば、債権者とのやり取りをすべて任せることができますので、そのような精神的な負担から解放されることでしょう。
また、弁護士からの受任通知が債権者に届いた後は、債権者からの取り立てもストップしますので、経済的な再建に向けて動き出すことが可能になります。
5、まとめ
個人再生をすることによって、ブラックリストに登録されてしまいますので、個人再生後のローンについては、一定期間利用することができません。しかし、ずっとブラックリストに載っている状態が続くわけではありませんので、5年から10年を経過すれば、再度ローンを組むことが可能になります。
個人再生をはじめとした債務整理をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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