自己破産で裁判所から呼び出し│回数や注意点を知ってから出廷を
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山梨県県民生活部県民生活センターでは、多重債務で悩んでいる方に向けて相談窓口を設けています。
多重債務の解決方法としては、任意整理をはじめ、税金や養育費、損害賠償債務等一定の債務を除いたすべての債務が免責となる自己破産がありますが、自己破産を申し立てると、少なくとも1回以上は裁判所から呼び出されるタイミングがあります。
自己破産を検討している方は、裁判所からの呼び出しに戸惑うことがないように、裁判所においてどのような手続きが行われるのか、本記事を読んで知っておきましょう。
今回は、自己破産手続きにおいて裁判所から呼び出されるタイミングや、呼び出された際に行われる手続きの内容などをベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が解説します。
1、自己破産をすると裁判所から呼び出しを受ける
借金で返済しきれないほどの債務を負った場合は、自己破産によって借金をゼロにできる可能性があります。
ただし、自己破産を申し立てると裁判所から呼び出しを受けることになるので、その理由や手続きの内容を知っておきましょう。
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(1)自己破産とは
自己破産とは、債務者の財産を処分して債権者へ配当した後、残った債務(法律上免責されない債務を除く)をすべて免責にする債務整理の手続きです。
返済期日がきても債務を弁済できない「支払不能」(破産法第2条第11項)の状態に陥った場合に、自己破産を申し立てることができます。
収入等にかかわらず利用できる上に、債務全額の免責が認められるため(法律上免責されない債務を除く)、自己破産は債務に苦しむ方にとって最後のセーフティネットとして機能しています。 -
(2)呼び出し回数は手続きによって異なる|同時廃止事件と管財事件
自己破産手続きの中で、債務者が裁判所に呼び出される回数は、「同時廃止事件」か「管財事件」かによって異なります。
「同時廃止事件」とは、破産手続きが開始と同時に廃止される破産事件で、呼び出しは1回ですみます(詳細は「2、自己破産で裁判所への出頭が必要な回数とタイミング」で後述)。
債務者の財産が、裁判所に納める手続きの費用(20~50万円ほど)に足りない場合は、原則として同時廃止事件として取り扱われます(破産法第216条第1項)。
「管財事件」とは、破産管財人(破産者の財産を管理する人、弁護士が通常)が債務者財産の換価・処分や、債権者への配当を行う破産事件で、最低でも2回は出頭が必要になります。
なお裁判所によっては、破産管財人の業務を簡略化する代わりに予納金額を低額とする「少額管財」と破産管財人が通常どおり業務を行う「特定管財」の2種類があります。
2、自己破産で裁判所への出頭が必要な回数とタイミング
自己破産の手続きにおいて、債務者が裁判所に出頭すべき手続きは、
- 債務者審
- 債権者集会
- 免責審尋
の3つです。
ただし、同時廃止事件の場合は債務者審尋・債権者集会が行われず、債務者が呼び出されるのは「免責審尋のみ」となります。また、債務者本人の出席が必須なのは免責審尋のみであり、債務者審尋・債権者集会については、原則として代理人弁護士を出席させることができます。
したがって、前述の通り、同時廃止事件や弁護士による代理人申立ての場合、債務者本人が裁判所に出頭しなければならないのは1回だけとなります。
これに対して、債務者本人が破産申立てを行った管財事件については、債務者審尋・債権者集会・免責審尋への出席が必要になります。債権者集会が1回のみかつ免責審尋と同日に開催される場合でも、最低2回は裁判所への出席が必要です。
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(1)債務者審尋
債務者審尋は、破産手続開始の申立てを行った後、裁判所が破産手続開始の決定を行う前に行われます。
債務者審尋では、裁判所が破産手続きの開始要件を満たしているか否かを審査するため、債務者に対して質問を行います。
主な質問内容は、- 債務の内容
- 金額・滞納状況
- 所有する資産の内容・金額
などです。
ただし、弁護士による代理申立ての場合には、債務者本人は出席せず、弁護士を債務者審尋に代理出席させることも可能です。
また一部の裁判所では、裁判官と代理人弁護士が事前相談を行うことで、債務者審尋そのものを省略する運用がなされています。 -
(2)債権者集会
債権者集会は、債務者財産の換価・処分状況や配当の見込みなどにつき、破産管財人が債権者に説明する手続きです。破産手続開始の決定から、おおむね3か月程度が経過した時期に債権者集会が行われます。
シンプルな破産事件であれば、債権者集会が開催されるのは1回限りで、同日に免責審尋(後述)も行われます。これに対して、債務者財産の換価・処分が長引いている場合には、複数回の債権者集会が開催されることもあります。
弁護士による代理申立ての場合は、債務者本人が債権者集会に出席せず、弁護士を代理出席させることも可能です。ただし、免責審尋と同日に行われる債権者集会については、債務者本人の出席も必要になります。 -
(3)免責審尋
免責審尋は、破産免責を認めてよいか否かを判断するため、裁判所が債務者本人に対して質問を行う手続きです。裁判所は必ず免責審尋を開かなければならないわけではないですが、実務上は、債権者集会(複数回にわたって開催される場合は、最後の債権者集会)に引き続いて免責審尋が行われます。
破産免責は、以下のいずれかに該当する場合に認められます。- ① 免責不許可事由がない場合
- ② 免責不許可事由があるものの、裁判所が免責を認めてよいと判断した場合(裁量免責)
裁判所は免責不許可事由の有無、債務者の反省や更生に向けての意思などを確認した上で、上記いずれかに当たると判断すれば免責許可決定を行います。
免責審尋には、債務者本人の出席が必須です。弁護士による代理人申立ての場合でも、必ず債務者本人が出席する必要があります。
3、自己破産で裁判所に出頭する際の注意点
自己破産の手続きの過程で、裁判所の呼び出しに応じて出頭する際には、以下の各点にご留意ください。
- ① 破産手続きに最大限協力する
- ② 免責審尋では誠実に受け答えを行う
- ③ 弁護士による代理申立てのメリットを知っておく
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(1)破産手続きに最大限協力する
裁判所から呼び出しがあった場合、基本的には裁判所の指示に従い、破産手続きに最大限協力することが大切です。
破産手続きに非協力的な態度を見せると、裁判所に免責不許可事由(破産法第252条第1項第6号~第9号、第11号)があると判断されるおそれがあるのでご注意ください。 -
(2)免責審尋では誠実に受け答えを行う
債務者本人の出席が必須とされている免責審尋は、破産手続きの中で重要な手続きのひとつです。
免責審尋に臨むに当たって大切になるのは、うそをつかず誠実に受け答えることです。裁判所の質問に対して説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりすると、免責不許可事由に該当します(破産法第252条第1項第8号)。
債務者に関する事情は、事前に破産管財人が調べ尽くしているため、うそは裁判所に見抜かれる可能性が高いです。真実だけを話しつつ、経済的な更生に向けた決意をアピールすることを意識しましょう。 -
(3)弁護士による代理人申立てのメリットを知っておく
債務者審尋と債権者集会については、弁護士が代理で出席することができます。裁判所の呼び出しに適切に対応できるか不安な場合は、弁護士に破産申立てを一任することで、心理的負担から解放されるというメリットがあります。
また、債務者本人が対応する必要のある免責審尋についても、併せて弁護士に相談すれば、どのように対応すべきか適切なアドバイスがもらえるでしょう。
4、自己破産の手続きを弁護士に相談すべき理由
自己破産については、破産法で詳細にルールが定められており、申立てに当たっては多くの注意点が存在します。そのため、弁護士に破産申立ての代理を依頼するのがおすすめです。
弁護士に自己破産の申立てをご依頼いただくことには、主に以下のメリットがあります。
- 申立てに必要な調査、提出書類の準備、実際の破産手続きへの対応などを、弁護士が全面的に代行いたします。
- 免責審尋などで裁判所に呼び出された際、対応や心構えなどに関するアドバイスを行います。
- 免責不許可事由がある場合にも、裁判所に裁量免責を認めてもらえるようにサポートいたします。
- 少額管財の運用が行われている裁判所に破産申立てを行う場合、弁護士が代理人申立てを行えば、多くのケースは少額管財として取り扱われ、裁判所に納める予納金が低額となります。
弁護士への相談により、スムーズに自己破産の申立てを行うことが可能となります。借金など債務の支払いが困難になった方は、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
自己破産を申し立てた場合、債務者が裁判所に呼び出される手続きは、債務者審尋・債権者集会・免責審尋の3つです。
ただし、弁護士による代理人申立ての場合、債務者本人の出席・対応が必須となるのは免責審尋のみで、債務者の負担は大きく軽減されます。そのため、手間なくスムーズに破産免責を得るためには、弁護士への依頼をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、自己破産を含む債務整理に関するご相談を随時受け付けております。借金の返済が困難になった方は、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスにご相談ください。
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