違法伐採とは? 科される罰則と実際にあった事例
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違法伐採をしてしまった場合、犯罪として刑罰が科されることになるのでしょうか。他人の森林を伐採してしまうと、森林窃盗罪などの罪に問われるおそれがあります。
そこで、この記事では、違法な伐採となる場合や違法伐採で逮捕された後の手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスの弁護士が分かりやすく解説していきます。
1、違法伐採とは|定義と罰則
違法伐採とは、具体的にどういった内容を指すのでしょうか。違法伐採の概要や科せられる罰則について解説します。
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(1)違法伐採の定義
違法伐採とは、国やそれぞれの地域の法令・条例に違反して森林の伐採を行うことを指します。
森林に対して所有権や伐採権がない者が、権利者・管理者に無断で伐採を行う場合や、伐採の許可を受けても許可条件に違反して行われる場合も違法伐採となります。
特に森林の保護に関する法律として、「森林法」が制定されています。
森林法は、森林計画、保安林その他の森林に関する基本的事項を定めて、森林の保続培養と森林生産力の増進とを図ることによって、国土の保全と国民経済の発展とに資することを目的としています(森林法第1条)。
森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者は、森林窃盗として犯罪となります(同法第197条)。
森林窃盗による盗品を原料として木材、木炭その他の物品を製造した場合、その物品についても森林窃盗の盗品とみなされます(同法第199条)。また、森林窃盗による盗品を収受したり、それらを運搬、寄蔵、故買、牙保(売買の取り次ぎ)をしたりすることも犯罪になります(同法第201条)。
さらに、保安林においては、政令の定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければ、立木を伐採することは原則として違法となります(同法第34条)。 -
(2)違法伐採に科される罰則
森林窃盗が成立した場合には、「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科されます(森林法第197条)。保安林の区域内において森林窃盗を犯した場合には、「5年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科されます(同法第198条)。
刑法における窃盗罪の法定刑は、「10年以下の拘禁刑」または「50万円以下の罰金」とされているため(刑法第235条)、森林窃盗は、刑法の窃盗罪よりも罰則が軽くなっていることが分かります。
このように森林窃盗が通常の窃盗罪よりも軽い刑罰となっている理由は、一般的に森林内では権利者の管理・占有の程度が緩やかであり、犯罪の客体である森林産物は盗まれやすい状態に置かれていることがあげられます。また、森林産物は土地に定着して生育するものであるため、他の動産と比べて財産的な価値が低いという理由から、一般的に違法性が低いと考えられています。
森林窃盗による盗品を収受した場合には、「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科されます(森林法第201条1項)。また森林窃盗による盗品を運搬、寄蔵、故買、牙保(売買の取り次ぎ)した場合には、「5年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」に科されます(同条第2項)。
また、都道府県知事の許可を受けずに、保安林又は保安施設地区の区域内の森林の立木を伐採した場合には、「150万円以下の罰金」が科されます(同法第207条1号)。
2、違法伐採で逮捕された事案
他人が所有する山林を無断で伐採して盗んだとして、森林窃盗の罪で有罪判決が下された事案があります。
この事案は、林業会社長の被告人が、売買契約を結んでいない高齢の男女2名が所有する県内の山林の杉計20本(21万円相当)を、自身の会社の従業員に伐採させて盗んだというものでした。
裁判では、被告人に「森林窃盗の故意」があったか否かが争点とされました。
検察側は、被告人が周辺の所有者とは売買契約を締結しており、仲介業者から事前に、伐採してはいけない範囲の説明を受けていたにもかかわらず意図的に盗伐したと主張しました。
これに対して、弁護人側は、契約済みだと思い込み作業ミスにより「誤って伐採」してしまったもので、窃盗の故意はないと反論し、無罪を主張していました。
この事案において裁判所は、被告人の主張を信用できないとして排斥したうえ、被告人に懲役1年執行猶予4年(求刑懲役1年6か月)の有罪判決を言い渡しました。
3、違法伐採で逮捕された後の流れ
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(1)【逮捕後48時間以内】検察へ送致
逮捕とは、罪を犯した疑いのある人物が逃亡・罪証隠滅することを防止し、強制的に身体を拘束する処分のことを指します。
逮捕は原則として、裁判官が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状により行われなければなりません(通常逮捕)。このような令状審査による逮捕が行われる理由は、慎重な事前審査を行い、捜査機関の権限濫用を防止するためです。
現行犯として逮捕される場合には、犯行や犯行の終了を逮捕者が現認しているという類型的な事情があります。令状手続きを経なくとも正当な理由のない逮捕が行われる可能性が低く、また犯人の逃亡のおそれも高いため緊急性もあります。
したがって、現行犯として逮捕される場合には、裁判官による事前の令状審査の例外として、一般人でも無令状で被疑者を逮捕することができます。
警察官に逮捕された場合には、弁解録取書が作成され、身体拘束から48時間以内に検察官に送致するか・釈放するか否かが判断されます。 -
(2)【逮捕後72時間以内】勾留されるかどうか決定
事件の送致を受けた検察官は、被疑者に弁解の機会を与え、身柄を受け取った時から24時間以内、かつ最初に身体拘束を受けた時から72時間以内に勾留するか・釈放するかを判断しなければなりません。
検察官がさらなる身体拘束が必要であると判断した場合には、検察官の請求に基づき、裁判官が令状に基づき勾留を決定します。
裁判官は面前で被疑者に勾留質問を行い、被疑事件に関する陳述を聞いて勾留するかどうかを判断します。 -
(3)【勾留から10日以内】起訴・不起訴の決定
勾留が決定された場合には、10日間の身体拘束が続くことになります。
検察官は、勾留期間中に事件の捜査を行い、被疑者を起訴または不起訴とするのかを判断することになります。
なお、捜査のため必要がある場合には、もう10日間を上限として勾留が延長される可能性があり、逮捕・勾留された場合には、最長23日間の身体拘束が継続する恐れがあるのです。
被疑者を不起訴とするか否かは検察官の権限であり、嫌疑が不存在・不十分の場合のみならず、犯罪の事実は認められるものの刑罰を科す必要がないとして起訴猶予の判断がなされる可能性があります。 -
(4)【起訴から約1か月】刑事裁判
勾留中に検察官による公訴提起(起訴)がなされた場合、被疑者は被告人の立場となり刑事裁判により処遇が決定されます。
公訴提起後は、保釈が認められない限り、裁判まで引き続き身体拘束されることになります。
起訴から1か月程度で裁判期日が指定され、証拠調べや弁論手続きが行われます。自白事件等の場合には1回の期日で審理が終了し、その2週間程度あとに判決が言い渡されることが多いでしょう。
4、刑事事件を弁護士に依頼するメリット
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(1)逮捕直後に接見できるのは弁護士だけ
逮捕直後に家族や友人との接見が禁止されていたとしても、弁護人や弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見は自由に行えます。
接見交通は、身体拘束を受けた被疑者とその弁護人の権利であるからです。
逮捕直後に家族や職場に連絡を取りたい場合には、弁護士を介して行うことになります。
弁護士との接見は、捜査機関の立ち会いなしの秘密交通権が保障されています。そのため、事件の内容や自身の言い分などについて、自由に話をして、弁護士から取り調べ対応などのアドバイスやサポートを受けることができます。 -
(2)刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼できる
刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼することも重要です。
経済的な理由から被疑者・被告人自身で弁護士を選任できない場合、国選弁護士制度を利用することができます。国選弁護士制度は、費用は国が負担してくれるため無料です。しかし、以下の点について注意が必要です。- 弁護士を自由に選ぶことはできない =刑事事件の経験豊富な弁護士とは限らない
- 好きなタイミングで弁護士を選任することはできない =逮捕直後の弁護活動ができない
- 自由に解任、変更することはできない =熱心に弁護活動してくれないなどの理由で自由に解任、変更はできない
一方で、私選弁護士であれば、逮捕直後からサポート可能なため、取り調べのアドバイスや早期釈放に向けた弁護活動が期待できます。
刑事事件を適切に解決するためには、刑事訴訟法などの法令や過去の裁判例などに関する知見や交渉力などが必要になりますので、可能であれば、刑事事件の取り扱い件数や解決実績が豊富な弁護士や法律事務所を選ぶべきでしょう。 -
(3)不起訴や早期釈放に向けた弁護が迅速にできる
不起訴や早期釈放を勝ち取るためには、逮捕段階から弁護士に弁護活動を行ってもらうことが重要です。そのため、すぐに弁護人を引き受けてくれるか、依頼後すぐに弁護活動に取り掛かってくれるかという点がポイントとなります。
とりわけ特定の被害者がいる事件の場合には、被害者との示談をすることが、早期釈放や不起訴の判断に大きな影響を与えます。
信頼できる弁護士にすぐに事件を依頼するとよいでしょう。
5、まとめ
本コラムでは、違法伐採をした場合に成立する犯罪や、逮捕された後の手続きの流れなどについて詳しく解説しました。
違法伐採をして逮捕されるか心配な方は、ベリーベスト法律事務所 甲府オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、森林の所有者に対しての示談交渉を行うなど、早期釈放や不起訴処分の獲得を目指して全力でサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています